初日の今日は「ポスト・メインストリーム時代のジャーナリスト」と題したセッションが行われ、「ロシア・セヴォードニャ」のドミトリー・キセリョフ社長がモデレーターをつとめた。従来のメインストリームにのっとったメディア報道とはどのようなものか。キセリョフ社長によれば、それは「アメリカこそ世界の中心であると見なし、アメリカに特別な存在感を与える報道」である。キセリョフ社長は、それらの報道は、「一極集中の世界」の理想をかなえてしまうものだと懸念を示した。そしてまた、この一極集中世界を前提にした報道こそが、アメリカに武力行使の大義名分さえも与えてしまっていたのだ。
メインストリームの定義には別の見方もある。西側の、組織化された巨大メディアをメインストリームと考え、それ以外のメディア全てをサブ・ストリームと考える場合だ。英国「テレグラフ・メディア・グループ」の著名エコノミスト、リアム・ハリガン氏はスプートニクのインタビューでハンター・トンプソンについて言及した。彼こそメインストリームから逸脱した人物だ。トンプソンは作家としても活躍したアメリカのジャーナリストで、11年前に自殺しこの世を去っている。彼は、それまで中立・公正であることが理想であるとされていたジャーナリズムの世界において、ゴンゾー(ならず者)・ジャーナリズムと呼ばれる取材・発表手法を用いた。トンプソンは記事の中に自分自身を登場させ、自分自身をも取材対象の一部に組み込んだのだ。取材対象に対して、究極に「主観的な」立場でアプローチしたと言える。
現代社会においてはブログやSNSの発達によって、誰もが情報の発信者となり、ジャーナリストを名乗ることができてしまう。一般人が、ソーシャルメディアを通して本当に人気ジャーナリストになることもあり得る。ハリガン氏は「もしトンプソンが生きていれば、人気ブロガーとなっていただろう。彼の人気を考慮すれば、大手メディアも彼を無視できなかったはず。今、優れた作家やテレビ司会者の中には、メディアのブランドに頼らず自身の才能のみで勝負している人がいる。これはポスト・メインストリーム時代において特徴的な傾向だ。優れたジャーナリストやコラムニスト、編集者などはまず自分のサイトを作り、ある程度の名声を得た後、より広く自らのコンテンツを浸透させるために大手メディアと契約することがある」と述べた。
明日7日は、2つのセッション「新しいメディア:情報の自由の保障」および「独占の終わり:オープンな情報の世紀」が行われる。