米MDのTHAADの配備について韓国社会ではますますさかんに公式的な声明が出されるようになっている。一連の地方の代表者らからはすでに自分の地域では配備受け入れはないという言明がなされている。野党の選挙での勝利によって議会内ではTHAADの配備についての態度が割れる結果となった。これとは対照に韓国軍部は米MDへの関心を隠そうとはしていない。 軍事専門家でCIS諸国研究所のウラジーミル・エヴセーエフ副所長はTHAADは韓国国民を北朝鮮の核の脅威から守るどころか、反対にその攻撃の対象としてしまうものだとの考えを示し、次のように語っている。
「韓国国民はTHAAD配備計画を不服としている。それは地政学的紛争が起きた際、その相手は北朝鮮だけでなく中国もなりうるのだが、MDは中国からのミサイル攻撃の対象になりうるからだ。なぜなら近い基地に配備されている中国の中距離ミサイルは日本へ仮に攻撃が行われる際にはTHAADの攻撃ゾーンの上空を通過するからだ。このため中国はこれを殲滅せざるをえない。核を積んだミサイルが攻撃されれば地域住民が被害を受けるのは当然だ。これは韓国国民は自国内へのTHAAD配備を熟慮する根拠を与えていると思う。第2に韓国の国民は国の指導部とは異なり、全員が反北朝鮮ではない。」
米国はロシア、中国からの反対を恐れ、韓国に対して早急に決めるよう迫っている。ロシアと中国はTHAADの韓国配備に断固として反対しており、米国は韓国を単にグローバルMDシステムに引き入れようとしているとの見方を示している。エヴセーエフ氏は今の複雑な状況のなかで韓国指導部はなんとか巧みに切り抜けようとしているとの見方を示し、さらに次のように語っている。
「韓国が示そうとしているのはこの状況を注視しているのは中国だけでなく、韓国領内にはTHAAD展開の必要性はないとする中国を支持しているロシアも同じだということだ。このことから韓国は極めて慎重な態度を取らざるを得ない。一方では米国が韓国に圧力を加えており、もう一方では中国、ロシアと深刻な問題を引き起こさぬようなんとか妥協の道を探さざるをえない。中国とは経済関係を損ねてしまう危険性がある。中韓には共通の市場を創設する計画がある以上、こうした関係悪化は韓国にとっては危機的になりうる。このことすべてから韓国指導部はジグザグ走行をせざるを得ない。だが韓国領内に最終的にこうしたシステムが出現した場合、中国はこの挑戦をかわすだろう。なぜなら中国はこれを脅威と受け止めているからだ。」
韓国が中国の憂慮をしっかり受け止められぬ場合、たとえば韓国領内のMD施設に自ら攻撃をしかけるなど、中国は自力で解決策をとりかねない。