武貞教授「韓国は中国との経済関係を切ることはできませんし、軍事関係では米国との関係を切ることができません。朴政権は相当無理をして、経済は中国と、軍事は米国と関係を築いてきましたが、それがほとんど破綻したということです。政策に非常に無理があり、それがTHAADの配備につながりました。
結局韓国の本音は、外交軍事の分野では、中国よりも米国を相手として緊密な関係を築く必要があるということ、また、これを明らかにしなければならないということです。韓国は米中の板ばさみという非常に厳しい状況になり、朴槿恵大統領が三年間やってきた『二股外交』を今までどおり続けることは難しくなりました。その意味で、今回のTHAAD配備は、中国・ロシア・米国の本音が全部出た一つの出来事であったと思います。残りの一年半、朴政権は苦しい外交政策の運営をしなければならず、厳しい立場におかれるでしょう。」
また、ロシアの軍事評論家でCIS諸国研究所の専門家、ウラジスラフ・エフセーエフ氏は「今回の措置は、より大きな懸念を中国側から呼び起こしており、その結果、中国政府の北朝鮮問題へのアプローチが変わるかもしれない」と指摘している。
エフセーエフ氏「中国は、米国の対ミサイル防衛システム配備に対し大変敏感に鋭く反応しています。なぜなら、朝鮮半島から比較的遠くない場所に基地を置く中国の中距離ミサイルを迎撃できる可能性が生じるからです。韓国にはすでにTHAADシステムの他、イージス艦が配備されており、海上からミサイルを迎撃できます。
また韓国に最新の迎撃ミサイル・システムが配備されたら、結果的に中国の北朝鮮問題に対するアプローチが変わるかもしれません。もし中国が、将来深刻な脅威を感じるとしたら、彼らは北朝鮮に対する制裁緩和に踏み切り、国境をより透明なものにする可能性があります。つまり『北朝鮮が核やミサイル実験を実施するのをやめるよう、平壌の指導部に圧力をかけよう』とする中国の立場が弱まるだろうという事です。その代わりに、中国と北朝鮮の潜在的関係は温暖化し、あべこべに韓国との関係は冷却化してゆく可能性があります。
こうした好ましくない状況から抜け出す最良の出口となり得るのは、一つのまとまった地域安全保障システムの創設です。そうしたものができれば、朝鮮半島の緊張をほどく助けになるでしょう。北朝鮮当局が、若干の対立緩和に向けた期待を示しているにもかかわらず、米国が、そうした動きを妨害するに違いないことは現在すでに明らかです。なぜならそれは、米国の戦略的利益にそぐわないものですから。」