世界アンチ・ドーピング機関(WADA)は国際スポーツ社会に対してロシア人スポーツ選手全員の2016年ブラジル、リオデジャネイロでのオリンピックをはじめとする国際競技への参加を「文化が変わるまで」禁ずるよう呼びかけた。WADA独立委員会はこうした提言をした理由として、モスクワのアンチドーピングラボが禁止薬物を使用していたスポーツ選手を隠蔽していた証拠を明らかにしたからだと説明しているのだが、その前日のニューヨークタイムズ紙の報道では、10カ国のアンチドーピング機関がリオ五輪にロシア代表団自体を参加させまいとしているという。
ロシア五輪代表団をめぐる憂慮すべき事態についてスプートニクはロシアオリンピック委員会の名誉会長であり、国際オリンピック委員会(IOC)のメンバーでもあるヴィクトル・スミルノフ氏にコメントを依頼した。スミルノフ氏は2011年12月、ジョアン・アヴェランジェ氏がIOCを去った後、IOCの中でも40年以上と最も在任歴の長いメンバーとなった。
私個人としてはロシア反ドーピング機関がたとえば米国、カナダまたはドイツなど、どこかの国のスポーツ選手を除外するよう要求する事態など想像もできない。IOCはまず各国の五輪委員会および国際連盟と協力を行っており、実際に問題が起こった場合はそうした組織の立場のみに関心を払う。現段階ではロシア代表団全体を排除するなど問題になっていない。しかも一国の全員のスポーツ選手の出場を許すか許さないかという事を決めるのは特権的なもので、IOC総会のみが持つ権利だ。
だが私自身はこの事態はそこまで達することはないと確信している。なぜならIOC会長の声明はすでに出されているからだ。IOC会長は、IOCとしてはドーピングスキャンダルの真相究明は五輪開催後に行なう構えだと語っている。なぜなら1人やあるグループのスポーツ選手が間違いを犯したり、違反したとしても、罪もないスポーツ選手らが集団的にそれに対応することはできないからだ。」
五輪を復活させようという運動が開始されたとき、五輪の基本原則の一つとして政治と五輪を厳格に線引きすることが掲げられた。だがこの原則はしばしば破られており、五輪開催国の政治路線と真っ向から反する路線をたどる諸国に対しては、その参加がボイコットされるという事態は幾度も繰り返されてきた。スミルノフ氏はこれは非常に危険な傾向だと指摘し、さらに次のように語っている。
「ロシアのような国が参加する、参加しないといった問題はIOCの関心とは完全に真っ向から反対する。このためIOCはボイコットには絶対に関心を抱いていない。なぜなら類似した事態が起こった場合、これは悲劇となり、その決定は正しようがないからだ。全く不可逆的なプロセスに至り、スポーツ社会全体が真っ二つに割れてしまうだろう。しかも今まで行われてきたボイコットは何の結果ももたらさなかったではないか。こうした事は後になって多くの人が認識している。なぜならボイコットなどという行為は全く建設的ではないからだ。ロシア大統領はドーピングに対して断固とした闘いを行なう必要を再三にわたって繰り返しており、各国際連盟に対して協力を呼びかけてきた。国際スポーツ社会はこれを無視するわけにはいかないと思う。」
ペスコフ・ロシア大統領報道官は、ロシアはあらゆる法的メソッドを用い、最後まで自国の五輪参加選手の関心を擁護すると語っている。