8項目の経済協力プランにはロシアの産業多様化・生産性向上や人的交流の抜本的拡大などが含まれているが、すでに日露企業のタッグの好例が存在しているのが、先端技術協力分野だ。パナソニック・ロシアは、日系企業としてはいち早く、モスクワ郊外のハイテク産業経済特区「スコルコヴォ」に研究開発センターを開設し、一年以上にわたり新規プロジェクトを立ち上げるための取り組みを行ってきた。スコルコヴォはロシアにおけるシリコンバレーのような存在で、イノベーションセンターの先駆けである。
パナソニックがスコルコヴォで紹介してきた最新技術のひとつが、今年1月に発表されたfreeze-ray(フリーズ・レイ)だ。これは大容量のオプティカル・ディスク(光ディスク)を応用した、データアーカイブシステムである。データを長期間安全に、しかも低コストで保存できるとあって、大量かつ貴重なデータの保管をしなければならない事業者の注目の的になっている。
先月2日、パナソニック・ロシアは、freeze-rayのソフトウェアを、ロシアのRAIDIX(ライデックス)社が開発することで合意し、同社と覚書を交わした。ライデックス社はやはりスコルコヴォに入居しており、ロシア情報技術・通信省の鑑定審査をパスし、データ保管ソフトウェア分野で同省の認定メーカーとなった国内唯一の企業である。開発終了の暁には、製品は「メイド・イン・ロシア」のソリューションとして、ロシア国内外に展開していくことになる。ロシアの公的機関は自国の製品を優先して採用する傾向があるため、この点は大いに強みになる。パナソニック・ロシアの中村正人副社長は「この共同プロジェクトを絶対に成功させたいと思っています。ロシアでの販売を伸ばすことはもちろん、ロシアから欧州・アジアへの輸出も将来的に増やしていきたいと考えています」と意気込みを話している。
パナソニック・ロシアは、スコルコヴォに研究開発センターを設ける以前の2014年から、ロシアのスタートアップ「エンソルテクノロジー」社との協力を行っていた。同社は、パナソニックのリチウム電池をベースに、倉庫で物資を運ぶためのフォークリフトや、空港やショッピングモールで使われるフロアクリーナー等のための電源ユニットを開発した。リチウム電池を使用したフォークリフトは従来の鉛電池を使用したものよりも充電・消費効率がよく、既にアメリカやロシアの多数の企業で導入されている。
中村氏はまた、「ロシアビジネスを伸ばしたいと考えている日本企業がスコルコヴォに出てきて、ロシアのスタートアップとの交流をしたり、欧米企業の動きを掴んでおくことは非常に大事だと思います」と述べている。