広島平和記念資料館(原爆資料館)は、この映像資料を新着資料展、あるいは来年の2月にリニューアルオープンする東館の「被爆後の外国からの調査団」というコーナーで公開することを検討している。原爆資料館の加藤秀一(かとう・しゅういち)学芸課長は、ロシアからの映像資料の提供について次のように話している。
加藤氏「(ロシアから提供を受けるというのは)最初からあきらめていた部分がありますが、ナルイシキン議長からこのような形で提供して頂けたので、まだ多くの映像が残っているのかもしれない、その中には広島市や長崎市が所有していないような貴重なものがあるのかもしれない、と少し期待しています。ロシアの情報公開がどのようになっているかは存じませんが、もし公開して頂けるのならその場所へ直接出向き、写真や映像を提供頂けるように相談させてもらえればと思います。
昔の映像というのは数が限られていますから、映像が一本でも増えれば、そこから新たに判明する事実もあるかもしれません。例えば広島は原爆投下後、9月の中頃に台風の被害を受け、街の様相が大きく変わりました。もう少し後の時期には、バラックが建ち始めます。映像によって復興の状況や人々の生活の移り変わりを知ることができるのです。」
長崎の映像については調査団が入った時期がほぼ確定できているが、広島の風景が撮影された時期については、はっきりしていない。加藤氏が細かく見た限りでは、10月以降だと推定されるという。加藤氏は「映像と一緒に、時期を特定できる記録も提供して頂けると本当にありがたい」と話している。
資料を公開するのは、原爆による被害の実態を世界中の人々に伝え、核兵器の廃絶と世界平和を実現するために他ならない。
加藤氏「今回の寄贈は、ロシア人を含む色々な方に資料を見てもらい、広島、長崎がどんなに悲惨なことになったかを知っていただく機会にもなるのではないかと思います。核兵器の時代になってしまい『いつでも、このような悲劇が世界中で起こり得る』のだと、そこまで思いを馳せて頂ければと思います。」
8月6日、原爆の日に行われる広島で行われる平和祈念式典。今年は91カ国およびEUの代表が参加する予定だ。