「朝鮮民主主義人民共和国、北朝鮮には、兵器用核分裂性物質の2つの源がある。一つは、ヨンビョンの核センターにある25から35メガワットの生産用原子炉で、もうひとつは、2千から4千と、様々にその数が推測される遠心分離機が置かれている濃縮工場だ。おまけに原子炉の作業は一定のサイクルで進んでおり、それは軌道上からの偵察で明らかだ。平均のサイクルは、1年から2年である。そうしたそれぞれのサイクルの後、受け取られた燃料は搬出され、工場で加工される。濃縮ウランの加工には、さらに数週間かかる。しかしその量は、隣の核保有国、中国やロシアが古いストックの形でのみ入手した兵器級物質の量に比べても、微々たるもので、観測誤差のようなものに過ぎない。北朝鮮の主要な敵国である米国の備蓄量と比べても、状況は変わらない。また、すでに保有しており絶えず拡大しつつある韓国や日本の原子炉における『平和目的』のプルトニウムの量と比較しても、その差はやはり何十倍もあり、北朝鮮当局には不利である。」
現在、これまだなかったほどの重い潜在力を持つに至った北朝鮮に対し、隣国達は、同国の核実験にますます厳しく反応している。今年1月6日の核実験後まもなく、韓国セヌリ党のリーダー達は、朴槿恵大統領に、プルトニウムを抽出する目的で核燃料加工の可能性について検討するよう正式に要請した。これは技術的に、完全に行うことが可能だ。韓国最大の新聞「チョソン・イルボ」が公表した分析は、今持っている力を用いれば、韓国は18か月間で核爆弾を製造できることを、極めて詳しい形で物語っている。
これらの国々が核兵器を製造する潜在力は、北朝鮮などよりはるかに大きい。しかし自国のプルトニウムを兵器級に替えることは、彼らにとってそう簡単ではな い。まず米国をはじめとした国際社会が、それを許さないだろう。米国の核の傘の下にあり、完全にその安全が保障された同盟国には、自国の核兵器を保有する 段階まで、北朝鮮の行動を心配する理由はないからだ。
北朝鮮指導部の誰の頭にも、隣国を核攻撃する考えはない。そんなことをすれば、数分後には、自分達自身が殲滅されてしまう。北朝鮮の核兵器は、現在もやはり、その敵国の核兵器同様に抑止機能を果たしている。しかし自国の原子力プログラムを兵器級のものへ移行させる韓国や日本の可能性が大きくなるならば、そうした軍拡競争が、この地域の状況が変化した場合、一転して全く予測のつかない結果をもたらすこともあり得ると思う。
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