オーストラリア・ブリスベンでのG20は、対ロシア制裁導入後まもなく行われた。その事に特別注意は向けられなかったが、当時プーチン大統領に対する態度は、冷たいものだった。しかし翌2015年のトルコ・アンタルヤのG20では明らかな変化が見られ、制裁に関する西側の連帯の氷は薄くなっていた。どの国も制裁を取り消さなかったが、多くのものにとって、彼らが自分達の目的を達しなかったことは明らかだった。シリアでの反テロ作戦後、世界のマスコミ報道のトーンも大きく変わった。例えばFinancial Times,は、世界の諸問題解決における重要なキープレーヤーの一人に「ミスタープーチン」は変わったと報じている。それでは今回の中国でのG20 は、プーチン大統領とロシアにとってどんなものだったのだろうか?
ロシアの、雑誌「エクスペルト」の政治専門家、セルゲイ・マヌコフ氏は「ロシアが西側の必要不可欠で重要な同盟国に変わってゆく傾向が、この1年弱まることなく、かえって強まっている」と指摘し、次のように続けた-
「杭州での3日間、プーチン大統領は、フランス、ドイツ、英国など10カ国の首脳と会談した。すべてを列挙するまでもない。米国については言うまでもない。オバマ・プーチン会談は、他ならぬ米国側のイニシアチブで組織された。私の見るところ、杭州サミットは、世界の力の配置を、いずれにしても2016年秋の今の時期におけるパワーバランスを最終的に決めたと思う。現在どのような懐疑論者にとっても、またロシアに悪意を抱く人にとってさえ、制裁が事実上、破たんした事は明らかであり、その結果、より大きな害を誰にもたらしたかは不明である。また同時にすべての人は、ロシアなしにグローバルな諸問題を解決するのは不可能だと、より明確に理解するようになっている。2年前にもこの事は明らかだったが、今になって皆にはっきりしたものとなったのだ。まさにこの中国でのサミットが終わった後に、西側はおそらく、ロシアとの制裁前の関係に論理上ではなく実際上、徐々に戻り始めるだろう。」
これはつまり、安倍首相が、日本にとって好ましくない地政学的諸条件のせいでのみ、ロシアとの関係を密にすることを決めたという事なのだろうか? もちろんそうではない。おそらく安倍首相は、西側パートナー国の中で初めて、現実的で互恵的な協力が、長年の意見の食い違いよりも、日本とロシアにもっと大きな利益をもたらすという事に気づき、そうした路線をとったのである。
ここ数日、同様のシグナルが、欧州の議員達からも届いている。欧州評議会議員会議のアグラマント議長は、モスクワで主な政治グループの代表達と会談したさい、欧州評議会の枠内で建設的協力復活のため、ロシアと開かれた率直な対話を行いたいと述べた。この事は、プーチン的メタモルフォーゼがすでに、世界政治におけるトレンドになりつつあることを物語っているのではないだろうか? その事は、すでに次のG20サミットが示すに違いない。
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