英国に拠点を置く日本企業の大部分は、Brexit(EUからの英国の離脱)を前に、懸念を表し、英国がEUを離脱しなければよかったのにと愚痴めいた希望を口にしてきた。
しかしBrexitは、もはや起こってしまったことであり、経済学者達は、EUからの英国の離脱に対し、楽観的なものから悲観的なものまで様々な予想を立てている。なぜなら英国は、これから、EU共同市場から離れる手続きをしなくてはならなくなるからだ。このプロセスは数年にわたると見られるが、すでに日本企業は、ビジネス上のリスクをいかに阻止し下げるか、英国からの撤退も含め、あれこれ考えている。
カラリョワ:日本企業が英国から撤退する意向について話す理由となったのは、外務省の発表だ。日本外務省は、英国のEU離脱後に形成され得る状況について明らかにしてほしいと、多くの日本企業から要請があったと伝えた。具体的な企業名は出されなかったが、このことが、ビジネス界の警戒感を呼び起こした。統計によれば、海外には日本企業の支社1万5千以上がある。しかしそのうち現在欧州にあるのは、1千に満たない。数としては、かなり少ないものである。一方で他の数字もある。日本の投資の約50%が、英国を含めた欧州になされてきたというものだ。日本企業は、当然ながら、他でもない欧州市場への障害のないアクセス期待し、あるいはそれを保つことを当てにしてきた。」
記者:日本の実業界は、英国市場から、そんなに簡単に引き上げ、去る用意があるのだろうか?
カラリョワ:日本の実業界は、英国に投資しながら、EU経済に資本を投下してきた。そうした資金を簡単になくしてしまうことはできない。何か傾向が変わったからと言って成功している市場から企業を撤退させることは、投資上の決定として余りにも困難だ。そうした決定は、取締役会で下されるもので、常に容易でない。しかし日本では常に、市場の状況が考慮される。現在英国経済は、比較的悪くない。EUからの離脱まで、英国は、経済状況の改善と予算赤字縮小に向け非常に多くの努力をしてきた。そうした措置は、全く人気のないものだったが、それなりの実を結んだと言える。英国の経済状況は、現在安定しているからだ。しかしEU経済については、全くそう言うことはできない。ましてEUには、ギリシャやスペイン、ポルトガル、イタリアといった、重症の危機的状況にある周辺国もあるからなおさらだ。これらの国々は、絶えず、追加的な資金の注入を求めている。まさにそのために、英国からの多額の資金が消えてきたのだ。EUからの離脱が完了すれば、そうした資金は英国に戻ることになるだろう。日本企業が離脱(Brexit)ゾーンからEUの危機的ゾーンへと移動するとしたら、それは、単に論理的ではない。」
カラリョワ:英国は、日本の投資額と、その市場で活動したいと望む日本企業の数で欧州では最大の国に数えられる。英国に主に投資しているのは、日本の自動車メーカーと電気製品製造会社だ。このセグメントでは、そもそも日本企業は、欧州市場においてリーダーとしてのシェアを持っている。日本企業は常に機動的だが、生産拠点が国から撤退するのは常に難しい。まして日本車やコンポーネント、そもそも日本製品すべてに対する欧州での需要は、相変わらずかなり高い。おそらく会社の本部も移動しないだろうと思う。これは、優遇税制にも関連している。それ以外に英国には、日本企業の活動をサポートする多くのサービス部門、銀行や保険、流通会社が存在している。また、やはりロンドンが現在に至るまで、世界の金融の中心地であることも忘れてはならない。ロンドンには、商品取引も含め、一連の世界的な取引所がある。それ故、英国から日本企業を撤退させることには、明らかに大きな意味はない。私は、英国経済に長くショックは残らないだろうという楽観的な見方に傾いている。EUからの離脱後、皆が新しい現実を認めるならば、それは早急に回復すると確信している。長期的に見ても、欧州なしに英国経済は、はるかに良くなりさえすると思う。」
日本人が、そうした市場を放棄することはないだろう。その最も明白な理由は、そんなことをすれば損だからだ。それ故、英国への日本の投資がなくなったり、日本企業が撤退することについて語るのは、明らかに時期尚早である。
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