日弁連はこれまで公に死刑廃止を訴えたことはなかった。しかし今年、日弁連は既に改革の必要性を訴える宣言案を作成した。主な条項は全世界の死刑制度廃止運動の主張と完全に一致している。
死刑に断固反対の立場で知られる法学博士で1991年から2002年憲法裁判所判事を務めたロシア功労法学者タマーラ・モルシチャコワ氏はスプートニクのインタビューで次のように語った。
「死刑は犯罪率低減につながらない。死刑が行われている諸国の犯罪統計がそれを示している。加えて死刑にはほかの否定的影響もある」。たとえば、社会における残酷さの教育、死刑の脅威は事前に計画されたものでなければ犯罪を予防できないと言う事実、重要なのは、無実の人を裁いてしまった場合に司法の錯誤をただすことが不可能である事。「概してこの措置は社会における残酷さの教育と人命軽視に意味を見出さないならば相当無意味である」と同氏。
スプートニクはアムネスティ・インターナショナルで東アジアを専門とするキアラ・サンジョルジョ氏からもコメントを得た。
「アムネスティ・インターナショナルは日弁連の決定を歓迎する。第一に私は政府の行動を正当化するために世論の死刑支持を用いることを疑うべきだと考える。また、今一度、日本政府に国内の死刑実施を全面的かつ入念に議論しはじめることを保障せよという我々の訴えを繰り返したい。また我々は死刑判決の実行をより透明化し、事前に社会や被告の家族に通知し、できるだけ早く死刑完全廃止に進むよう訴えている」。
同氏は日本内外の研究(英レディング大学講師(犯罪学)の佐藤舞氏など)に言及、日本政府が典拠とする世論調査は質問の仕方が正しくないため必ずしも信ずるに値するものではない、と述べた。「死刑廃止は不可能だと思うか」との問いに80%が「やむを得ない」と答えたとしても、それが死刑の実行を「支持」していることを意味するものではない、という。サンジョルジョ氏は、違う聞き方で行った調査では結果が異なっていた、と述べた。
「死刑廃止はとりもなおさず欧州プロセスだ。刑罰の緩和化というアイデアは欧州でうまれ、日本にはあまり定着していない。それは日本の刑罰システムの伝統とも関係がある。そこには犯罪者の権利の擁護というものがなかった。それが世論に理解されており、日本には死刑廃止の広範な動きはない」。
ストレリツォフ氏は、今日本は政治面で刑罰緩和化を求める国際および欧州組織の圧力にあっている、という。世界の大国の役を担おうとするならば日本もこの方面におけるグローバルな傾向を考慮せざるを得ず、死刑廃止の問題を考えざるを得ない。すでに日本では死刑はきわめてまれに、個別かつ例外的にしか行われておらず、廃止が近い将来なされる可能性は充分ある、と専門家は語る。
「犯罪者であろうと国民である。国民を死刑に処すことにより国家は他の国民を残酷さで教育し、国民相互間または国民から国家への残酷さをあらたに生み出し続けている。これもまた有害で非生産的なことだ。犯罪と効果的に戦うなら、慎重かつ効率的な経済政策、効率的な社会政策、調和的で現代的かつ文明的な刑務所システムおよび全治安組織の稼働が必要だ。これをするのは死刑を導入するより難しいことだ」。2001年に大統領就任当初のプーチン大統領がロシアにおける死刑再施行反対の演説で述べた。
「一番難しいこと」を日本はすでに非常に高いレベルで達成している。あとは簡単なことに取り掛かるだけだ。