被験者は,帯状皮質の活動パターンを見ることができ、様々な感情の状態の中で示されている部分とそれとを対比することができた。これによって一部の被験者は、顔を評価すると同時に、自分の指数からフィードバックを行った。時間が経つにつれて、彼らは、自分の帯状皮質の活動を指揮管理することを学んだ。その結果、初め喜んだ顔をよしとした人が、今度は逆に、悲しそうな表情を好みだとした。
スプートニク記者は、この実験の価値について、ロシア高次神経活動・神経生理学研究所実験部長のオリガ・マルティノワさんに、コメントをお願いした。
マルティノワ実験部長:日本の学者達は、帯状回(脳回)を研究していた。これは、私達の脳の大変多くのプロセスや機能と関係している。それと共に、感情が変化する時、何が生じているのかということは、大変興味深い。 人間が、ある瞬間に、彼あるいは彼女の感情がどういったものなのかを正確に知るならば、これも興味深い。なぜなら我々の多くの感情は、意識されないものだからだ。しかしこの研究は、科学にとって、基礎的意義以上のものを持っている。これは、感情が生まれるメカニズムを理解するために意義のあるものだ。おそらくこれは、科学の人気を高めるだろう。なぜなら嫉妬や羨望などをつかさどる脳の部分が見つかったと聞けば、大衆は常に興味を持つからだ。 しかし人間の脳は大きく、ある部分は、一度にいくつかの機能を担当している。例えば、一つの部分が活発化すれば、それは、憤怒にも、好ましい肯定的感情にも、あるいは実務的な分析決定能力にも関係する可能性がある。 帯状回も、そうした脳の部分の一つなのだ。神経回路網の仕事はより重要だとは言え、それだけではないのだ。」
記者:脳のいかなる部分が、どんな感情を支配しているのかを知っていたので、実験参加者達は、そうした脳の部分の活性化を自分で制御し、様々な感情を整えることができた。全く様々な主観的経験や、しかるべき行動を呼び起こすこともできた。日本の学者達の研究は、人々に将来どんな、実際的なプラスをもたらすだろうか? また逆の結果、例えば、ある人間の代わりに誰かが「肯定的な感情」あるいは「否定的な感情」といったボタンを押してリモートコントロールし、彼の中に別の感情を呼びおこそうとしたりすることは、起こり得ないだろうか?
記者:感情の制御において、世界中の同じような研究が掲げる基本的課題は、言うまでもなく、まず第一に人間を助けることだ。例えば、脳コンピュータインタフェース(人と機械との間で高速通信すること。脳で思考するだけで、パソコンのカーソル操作や車椅子の操作などを行うことが可能になる)である。ロシアでも、そうした研究が積極的になされている。
マルティノワ氏:「例えば、動くことを想像するだけで、人間が人工器官を操作できるような試みがなされている。人間が、手の動きを想像すると、彼あるいは彼女の脳の電気的活動が記録され、その後、例えば、義手にそれを送るという試みだ。しかし、こうした事を人々が学ぶのは、やはり複雑で困難だ。あなたの神経活動を特定の方法で、いつ脳活動へと送るのか、それは難しい。皆が皆、うまく集中できるわけではない。それ故、成功の可能性は65%程度だろう。最小限である可能性もある。それにもかかわらず、仮想的な動きの概念を使ったバイオフィードバックは、多くの大学や研修センターで、行われている。ペテルブルグ脳センターでは、多動で注意力に障害を持つ子供達が注意を集中できるよう、フィードバックの助けも借りて、研究が続けられている。」
しかし我々は、自分達の日常生活においては、何か複雑で難しい方法によって、自分の感情を無理してコントロールなどしなくてもよいという事を忘れてはならない。心臓の鼓動に気を付けるよ人に頼む方がはるかに簡単だ。つまり、単に興奮しないようアドバイスするのだ。ある人にとっては、ペットの犬や猫を抱いてなでるだけで十分だろう。そうすれば我々は、再び良い気分の持ち主になる。そして、その良い気分を近しい人や友人と分け合うことができるのだ。