2015年の韓国人口統計は楽観視を許さぬものだった。合計特殊出生率、端的に言ってひとりの女性がうむ子供の数は、1.25人。両親ふた組で子供1人という計算だ。2006年より韓国では出産奨励策が盛んにとられてきた。毎年700万ドルの予算が費やされた。しかし、何らの結果も出なかった。
しかし半世紀前の出生率低減策は素晴らしく功を奏した。それが撤回されても、出生率は下がり続けた。理由は明快。教育を受けた女性は、子供にかまけるより、仕事をし、キャリアをつむようになるのだ。男はこれまで通り妻を助けることができず、また、それを望まない。伝統的な家庭は崩壊しつつあり、祖母の援助も見込みにくい。また、年金保障のおかげで、老後の保険のために子供が要るという経済的要請も減った。この動きはとりわけ東アジアで顕著だ。出生率が特に低い国として韓国と並びトップにあるのがシンガポール、日本、台湾、香港だ。
これは非常に警戒すべきことだ。第一に、記録的な低出産率と記録的な高寿命が韓国では並行している。2060年には65歳以上の人口が40%を超えるとされる。100人の労働人口で80人の年金受給者を負担する(現在は18人)ことになる。
この十年の経験から、出生率向上策の効果に疑問視がなされている。こうなったら高齢化に備えるしかない。雇用者が高齢の職員を雇うことに利益を見出すよう法令の改正が検討されている。プロパガンダや財政的な影響力により出生率を引き上げる執拗な試みよりもこのほうが効果を上げるだろうことはおそらく間違いない、と国民大学教授アンドレイ・ラニコフ氏。