欧州議会によるロシアメディア批判の必要性とは?日本人専門家が背景事情を分析

© AP Photo / Geert Vanden Wijngaert欧州議会
欧州議会 - Sputnik 日本
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日本ではあまり大きく報道されなかったが、ここ数日、ロシアのマスメディアを賑わせているのは、欧州議会が11月23日に採択した決議文の内容である。この決議では、ルースキー・ミール基金やロシア国営のテレビ局「RT」、そして今ご覧頂いているスプートニクなどが、誤った情報を喧伝し、プロパガンダを先導する団体として、イスラム国やアルカイダと同列に名指しで非難されている。

決議文が採択されたからといっても、即刻EUでロシアメディアが活動停止に追い込まれるというわけではない。しかし今後の成り行き次第ではそうなる可能性もあり、ロシア人の識者やメディア関係者は、当然のことながら反発している。また、プーチン大統領は、「欧米の民主主義の堕落」とコメントしている。

ロシアのスプートニク通信 - Sputnik 日本
欧州議会、スプートニク含む反露メディア決議案採択
欧州といえば民主主義の先進国であり、言論の自由があると、大方の人が思っているだろう。しかしそういった国々の代表が、他国のメディアを非難するのは、少し奇妙にも思える。少々乱暴だが、欧州とロシアの関係を、日本と中国に置き換えて考えてみよう。例えば中国の国営メディアである新華社通信と、中国共産党の機関紙である人民日報は、インターネットで日本語で読むことができる。日本の読者はこれらを通して、中国の見解を知ることができる。もちろん中には日本人の気に入らない記事もあるだろうし、日中で大きく意見が異なるテーマもある。しかしそれでも日本人には「中国メディアは悪だからつぶせ」という発想は生まれないだろう。なぜなら情報の発信元が中国国営メディアであれば、そのメディアが中国の立場を代弁しているということは容易にわかるし、読む読まないも含めて、読者が取捨選択すればよいのだ。情報の選択肢は、多いほうがよい。

日本には国営の通信社はないので事情が異なるが、NHKワールド日本のように18言語で放送しているメディアはある。つまり、外国読者向けに、外国語で発信することは、大手メディアとしては一般的なことである。こうしてみると、ロシアメディアだけがEU域内での活動に対して、特別に非難されることには違和感が残る。この決議案は、ポーランドのアンナ・フォティガ議員のイニシアチブによって作成されたものだった。採決においては、691議席中304票が賛成票、179票が反対票だった。棄権した議員の数は208人にのぼった。

このような決議が採択された背景について、元共同通信社記者で、現在は国際情勢解説者である田中宇氏に見解を伺った。田中氏は、今回の欧州議会の決議は、米国で大統領選挙以来起きている「フェイクニュース」をめぐる戦いの一部であると指摘し、次のように述べている。

プーチン大統領 - Sputnik 日本
プーチン大統領:欧州議会の反海外プロパガンダ決議案は民主主義概念の政治的劣化の証拠
田中氏「米国では、主流派マスコミやフェイスブックなど、選挙戦においてクリントン氏を支援していたエスタブリッシュメントのメディア勢力が、『トランプを支持する勢力が歪曲された情報をネット上で流した結果、トランプが勝ってしまった』『歪曲情報を流すフェイクニュースのウェブサイトを取り締まるべきだ』と言い始めています。これに対し、トランプ氏を支持してきた勢力は『エスタブリッシュメントのメディア勢力の方こそ、クリントンを優勢にする歪曲されたフェイクニュースを垂れ流した』と反論し、戦いになっているのです。

米国のエスタブリッシュメントの側は、米マスコミの歪曲報道をきちんと歪曲として指摘した在外メディア、すなわちRTやスプートニク、プレスTV等も、フェイクニュースだとして非難する標的にしています。

米国の傀儡として機能している対米従属の欧州議会は、米国のエスタブリッシュメントの側に立ってこの戦いに参戦し、RTなどを非難する決議を出しました。ドイツのメルケル首相に代表される欧州のエスタブリッシュメントは、米国でのトランプ当選の影響で、フランスのマリーヌ・ルペンに象徴される欧州各国の草の根に支持された勢力に、来年の選挙で負けそうになっています。そのため欧州のエスタブリッシュメントは、ますます対米従属に固執するしかなくなり、これまでの濡れ衣的な対露敵視の延長線上で、RTやスプートニクなどを無根拠に敵視・非難する動きに出ています。しかし、米国のトランプ当選で始まった草の根からの民主革命は今後、欧州のエスタブリッシュメント支配も壊していく可能性が高いと思われます。そうした欧米や世界の動きを今後も正確に報じ続けるであろうRTやスプートニクなどは、今後の報道を通じて、欧米エスタブリッシュメントによる歪曲的な敵視を乗り越えていくと予測されます。」

 

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