決議文が採択されたからといっても、即刻EUでロシアメディアが活動停止に追い込まれるというわけではない。しかし今後の成り行き次第ではそうなる可能性もあり、ロシア人の識者やメディア関係者は、当然のことながら反発している。また、プーチン大統領は、「欧米の民主主義の堕落」とコメントしている。
日本には国営の通信社はないので事情が異なるが、NHKワールド日本のように18言語で放送しているメディアはある。つまり、外国読者向けに、外国語で発信することは、大手メディアとしては一般的なことである。こうしてみると、ロシアメディアだけがEU域内での活動に対して、特別に非難されることには違和感が残る。この決議案は、ポーランドのアンナ・フォティガ議員のイニシアチブによって作成されたものだった。採決においては、691議席中304票が賛成票、179票が反対票だった。棄権した議員の数は208人にのぼった。
このような決議が採択された背景について、元共同通信社記者で、現在は国際情勢解説者である田中宇氏に見解を伺った。田中氏は、今回の欧州議会の決議は、米国で大統領選挙以来起きている「フェイクニュース」をめぐる戦いの一部であると指摘し、次のように述べている。
米国のエスタブリッシュメントの側は、米マスコミの歪曲報道をきちんと歪曲として指摘した在外メディア、すなわちRTやスプートニク、プレスTV等も、フェイクニュースだとして非難する標的にしています。
米国の傀儡として機能している対米従属の欧州議会は、米国のエスタブリッシュメントの側に立ってこの戦いに参戦し、RTなどを非難する決議を出しました。ドイツのメルケル首相に代表される欧州のエスタブリッシュメントは、米国でのトランプ当選の影響で、フランスのマリーヌ・ルペンに象徴される欧州各国の草の根に支持された勢力に、来年の選挙で負けそうになっています。そのため欧州のエスタブリッシュメントは、ますます対米従属に固執するしかなくなり、これまでの濡れ衣的な対露敵視の延長線上で、RTやスプートニクなどを無根拠に敵視・非難する動きに出ています。しかし、米国のトランプ当選で始まった草の根からの民主革命は今後、欧州のエスタブリッシュメント支配も壊していく可能性が高いと思われます。そうした欧米や世界の動きを今後も正確に報じ続けるであろうRTやスプートニクなどは、今後の報道を通じて、欧米エスタブリッシュメントによる歪曲的な敵視を乗り越えていくと予測されます。」