夏のロシアの田舎にあなたが唯一持っていくべきものは何か

© SPUTNIK 日本/中村浩章帰りの馬舎にいたアンドリューフ
帰りの馬舎にいたアンドリューフ - Sputnik 日本
サイン
冬のロシアの田舎に魅了された私は、8月末、田舎を再訪し、リンゴを取ろうとしては木から落ちたり、夜の気温に凍えていた。 8月末のシャフニヤでは、アブやハエの猛攻や焦げ付く太陽は鳴りを潜めたものの、自然はまだ雪化粧を施しておらず、温和な夏のしっぽが私を包んだ。

今回のメインイベントは森でのハーブ、フルーツ狩りとバーニャ(ロシアの蒸し風呂)。そこに、予定外の織物工場見学が入った。なお、馬の名前はアンドリューフ。帰りに寄った馬舎にいた。

© SPUTNIK 日本/中村浩章コスチャとカーチャの家。日暮れ時にて
コスチャとカーチャの家。日暮れ時にて - Sputnik 日本
コスチャとカーチャの家。日暮れ時にて


電気が消えて、バーニャができた。
8月末までになされたコスチャの家での目立った変化は2つ。電気がなくなり、バーニャができたこと。電気がないため夜はキャンドルを付けて暮らした。夕方、日が落ちて窓の外の景色が青色からオレンジ、薄水色、濃藍色と変わる様子がはっきりと見える。夜、外に行き、明かりが必要な時は、懐中電灯を持っていくか、電池の減りを気にしながら携帯のライトで照らしていた。ネットなんて繋がらないんだけど。

© SPUTNIK 日本/中村浩章窓から覗く日暮れ
窓から覗く日暮れ - Sputnik 日本
窓から覗く日暮れ

 

© SPUTNIK 日本/中村浩章野菜を切る妻
野菜を切る妻 - Sputnik 日本
野菜を切る妻

 

© SPUTNIK 日本/中村浩章夜の室内
夜の室内 - Sputnik 日本
夜の室内

昼間はパーカーを着れば、家庭菜園を見学し、リンゴをかじりながら近くの野原や森を散策したり、広大な野原に向かいあった大きな木にかけられたお手製ブランコを漕ぐことができる。野良猫も悠然とお供してくれる。

© SPUTNIK 日本/中村浩章ブランコ全容
ブランコ全容 - Sputnik 日本
ブランコ全容

 

© SPUTNIK 日本/中村浩章ブランコ
ブランコ - Sputnik 日本
ブランコ


家庭菜園にはじゃがいもやミント、人参、ズッキーニ、カブと、きゅうり、トマトなどに加え、メロン、スイカ、咲き乱れる花、自由に闊歩する猫達。カブ好きが獣の目でバレたのだろう、カーチャが笑いながらカブを取り、サラダにしてくれる。

© SPUTNIK 日本/中村浩章家庭菜園とカーチャ
家庭菜園とカーチャ - Sputnik 日本
家庭菜園とカーチャ

 

© SPUTNIK 日本/中村浩章食べごろをずらすため、収穫時の熟度をずらす
食べごろをずらすため、収穫時の熟度をずらす - Sputnik 日本
食べごろをずらすため、収穫時の熟度をずらす

 

© SPUTNIK 日本/中村浩章食事
食事 - Sputnik 日本
食事

リンゴを狙う野生児初心者
フルーツ集めの様子は牧歌的とは言えなかった。リンゴの実が高くになっており、ジャンプしても取れないのだ。キツネのように、「いや、そこまで欲しくないけどね」と呟きつつも周りをウロウロしていると、鬱蒼とした枝の中に倒木を見つける。倒木はリンゴの実へと向かっている。
りんごを入れるバケツを持ちながら、倒木を這い伝う。と、急に男の声が聞こえる。怒られるのかと思うと、そこのリンゴは美味しいかと聞いてくる。美味しいと答えると、笑いながら去っていく。野生児になった気分だった。
行進を続け、あと一歩で実に手が届くというところで、枝がピシっと軋む。やばい、と思い、後ろに下がるも遅い。枝が折れる、近くの枝を掴む、手に情けなくぶらさがるバケツ。急いで下を見ると、枝やリンゴ、根で足場は最悪だが飛び降りれる高さ。
無事に降りたものの、収穫はゼロ。落ちた先は網のように張り巡らされた枝の中。意気消沈しながらも、人混みを抜けるように枝を押し抜け、外に出る。ため息をつきつつも穏やかに愉快な気持ちで、地道にジャンプして集め続ける。

© SPUTNIK 日本/中村浩章収穫物
収穫物 - Sputnik 日本
収穫物

遊んでいただけではなく、家事の手伝い(邪魔?)もしていた。例えば、湧き水から水を汲んだ。水は、40リットルのボトルに水を入れ、3輪台車で家まで運ぶのだが、重い。皮膚の下に骨が透けて見えるようなオフィスワーカーの手で、でこぼこ道を押す。赤ちゃんのようにヨタヨタと歩き、家にたどり着くものの、当然、赤ちゃんを見るときの微笑ましさはない。とはいえ、普段やりなれないことをするのは爽快だった。

 

© SPUTNIK 日本/中村浩章ボトルに水を注ぐコスチャ
ボトルに水を注ぐコスチャ - Sputnik 日本
ボトルに水を注ぐコスチャ

寒い。冷凍庫稼働開始。
さて、日が落ちてからの気温は予想外だった。一気に0度近くに落ちる気温。家が野原にぽつんとあり、風を遮るものも太陽の暖かさを蓄えるものもないためだろう。家主女性のカーチャが貯蔵庫を指し「やったー!うちの冷凍庫が動き始めた!」と冗談交じりに言ったほどだ。

 

© SPUTNIK 日本/中村浩章温かい家で談笑中。カーチャ、コスチャ、私
温かい家で談笑中。カーチャ、コスチャ、私 - Sputnik 日本
温かい家で談笑中。カーチャ、コスチャ、私


家は温かいので大丈夫だが、問題はトイレに行きたいときだ。トイレは家の外に一度出ないと行けない配置になっているのだが、当然コートもジャケットも持ってきておらず、諸処の事情で駆け足でトイレに突進することになる。しかし、上を見ると満天の星空。足がついつい鈍るも、下賤な身体的欲求に負けて足を進める。

唯一持っていかずに後悔したのは、秋物のジャケットだった。

初バーニャ
3日目の夜、ついにバーニャ(蒸し風呂)を体験した。家を出て、満天の星に囲まれて畑を進むと、草むらに隠れたところに小さな木造建築がある。扉を開けると、4人が入れるほどの、電球で照らされた縦長の空間が現れた。右手には端から端まで伸びるベンチに服を掛ける釘、左手には扉があった。服を脱ぎ扉を開けると、熱気とやや暗い空間が目に入る。意を決して中に入ると、左手と正面奥には木製ベンチ、右手には巨大な石のかまど。天井は低い。床やベンチには様々な大きさのたらいに、葉付きの枝の束。観察を終え暫くベンチに横たわり、体を温める。

© SPUTNIK 日本/中村浩章バーニャ外観
バーニャ外観 - Sputnik 日本
バーニャ外観

 

© SPUTNIK 日本/中村浩章バーニャ内部
バーニャ内部 - Sputnik 日本
バーニャ内部

そして、ついに枝の束で力一杯叩くマッサージの時が来た。枝で叩かれることで血行が良くなるらしいが、実際にプロのそれを経験したことはなかった。(コスチャは何年もバーニャ職人として務めていた。)
コスチャがかまどの熱湯をたらいに移し、枝を熱湯にさっと浸す。最初は、体の上で枝をただ振ったりサラサラとくすぐったいほどの弱さで体を撫ぜる。枝が熱気と芳香を運び、部屋の温度が一気に数十度上がったかのように感じるものの、痛みとしてはこんなものなのか?と油断していると、突然、腰を思いっきり叩かれる。一瞬、枝なのか鞭なのかがわからなくなる。息が漏れたあと、慌てて息を吸うと、熱い。続けて力強く足の先から手先まで全身を叩かれ、時に枝を体の上で振られる。次第に痛みと熱さに慣れてきて、辛いものを食べるかのような快感を感じ始める。10分ほど叩かれてマッサージが終わり、私はのんびりと寝転び続けた後、頭と体を洗う。

© SPUTNIK 日本/中村浩章マッサージに使う枝を吟味するコスチャ
マッサージに使う枝を吟味するコスチャ - Sputnik 日本
マッサージに使う枝を吟味するコスチャ


更衣室に出た後に話を聞くと、このバーニャは伝統的な「黒」バーニャ。黒バーニャは煙突がなく、屋根や壁の隙間から煙が漏れるのを待つため、部屋が黒くなる。また、昼から薪を炊いて、バーニャ全体を温めるのだという。

バーニャを離れ、極寒の畑に出ると、気温0度でも寒さを感じない。空を見上げると満天の星空。バーニャ後で体も心もふわふわさっぱりと軽くなった中、上下を狂わせるほどにきらめく空の光。地球は宇宙のように暗く、空は明るい。10分ほど身動きせずに星を楽しんだ後、家に向かった。凍えないように急いでトイレに走るのとは大違いだ。肌はびっくりするほどすべすべになった。

織物工場に突撃!
近くの町に織物工場があるというので、帰る途中に寄る。人力の大きな木製機械で糸から布を織っていた。ロシア伝統の美しいコースターやサラファン(ロシア伝統の農民服)やドレス、リュックサックまで売っていた上に工場価格で恐ろしく安かった。市場価格の3分の1ほど。急に訪れた来訪客にも非常に親切に接してくれて、サラファンやドレスを試着させてくれた。コースターやテーブルシーツを数枚買う。

© SPUTNIK 日本/中村浩章サラファンを着た妻と布織り機
サラファンを着た妻と布織り機 - Sputnik 日本
サラファンを着た妻と布織り機

行き方。チケットの値段、連絡先。
列車の乗車券は直前に購入したので片道2000ルーブル(約3400円)ほどだったが、余裕を持って買えば半値の1000ルーブル(約1700円)。
所要時間はモスクワから列車で約9時間。
希望者はコスチャにフコンタクチェで連絡を。3食・ツアー付き1泊1,000ルーブル。いつでもお客は大歓迎とのこと。
https://m.vk.com/mikulsky_konstantin
もしくはフェイスブックでカーチャに連絡
https://m.facebook.com/ekaterina.litvin.9

夏、ジャガイモを掘ったり木こりとして働くなどのボランティアは無料宿泊可。
ベジタリアン向け料理可。
ロシア語が好ましいが、英語でも対応可。

中村浩章

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