カトリックとは違い、正教のクリスマスはお正月前ではなく、お正月後、1月6日から7日にかけての夜に祝われるのだ。そして、ロシア人はこうした祝日の一部を、旅行に行ったり、家族や友人と宴席を囲んだりするだけではなく、当然、ただテレビを見て過ごしたりもする。
そもそも、音楽はすべてのお正月映画になくてはならないものである。この分野のロシアの古典といえば、間違いなく「カーニバルの夜」である。この映画が当時のソビエトで封切り上映されたのは1956年のこと。それから永遠のようなときが流れたように思われる。しかし、この作品は今も変わらず驚くほどに新鮮で、お正月らしいお祝いの雰囲気を作り出している。この映画ではじめて銀幕に輝いたのが驚くべき才能を湛えた女優、リュドミーラ・グルチェンコだ。これが彼女のデビュー作である。後に彼女は芝居の才能を花開かせたが、大多数の観客を魅了したのは彼女の類い稀なる音楽性だった。リュドミーラ・グルチェンコのこの才能はこの映画でいかんなく発揮された。ストーリーとしては、主人公である若い女性が新年のお祝いを本格的な楽しいカーニバルにすべく、官僚主義的な上司と戦い、奮闘するというもの。そして、彼女はそれを鮮やかにやってのける!人々はもともと計画されていた退屈なイベントの代わりに、ジョークを飛ばし、ダンスを踊り、歌を歌って、私たちが普段考えるような祝日を祝うのである。『カーニバルの夜』で使われた『五分』という曲は大ヒットし、今やこの曲のないお正月コンサートなど想像もできないほどだ。
21世紀に入ってからのお正月映画で、ロシアのヒット作品となったものは何だろうか?おそらく、過去5年では、もっともお正月らしいタイトルの映画『モミの木』だろう。お正月という幻想的な祝日にはモミの木が欠かせない。だから、そのまわりで主人公たちがさまざまなお正月の物語を繰り広げるのもうなずける。毎年、新たな物語が生まれており、このお正月には第5弾「モミの木5」が封切りになる。そして、映画館はお正月という素敵な祝日の魔法に触れたいと願い続ける観客でいっぱいになること間違いなしだ。