報告書の中では「テレビRTやスプートニクのような、グローバルな視聴者及び読者向けのロシアの地元マスメディアからなるプロパガンダ・マシーンが、選挙に影響を与えるキャンペーンに貢献した」と述べられている。
「米国の政策に影響を与え、不満を煽ろうと試みるクレムリンのテレビ」と名付けられた部分は、米諜報機関が公表した14ページの報告書のうち何と6ページも占めている。中でもソーシャルネットワーク上でのRTの影響については、特別のページが割かれ、RTが、アル-ジャジーラ英語版やBBCワールドやCNNといった他の国際チャンネルより、YouTube,上において、はるかに多くの空間を獲得していることを結論付ける図表などが示されている。RTが持つ視聴者がほぼ9億であるのに対して、BBCワールドは7億、アル-ジャジーラ英語版は3億、CNNは1億という事だ。またYouTube上でRTに加入している人の数も、他に比べて多い。RTが4億5千であるのに対し、BBCワールドは4億2500万、アル-ジャジーラ英語版は3億弱、CNNに至っては1億2500万である。
なお報告書のかなりの部分が、スプートニク通信及びテレビRTの編集長、編集主任であるマルガリータ・シモニャン氏についてのものだった。彼女の発言の数々、クレムリンやアサンジ氏との関係などが紹介されている。一方シモニャン編集長は、報告書のデータは正確でなく根拠薄弱だとして、自分のブログの中で、それらを皮肉を込めて批判した。
その中で彼女は「テレビRTは、すでに2013年に、世界のあらゆるニュースTVチャンネルの中で、YouTube上での視聴者数で初めて、10億人に達しました。恐らくロシアのハッカー達は、すでに当時もう、YouTubeのユーザーすべてをハッキングしていたのでしょう」と指摘し、米国のインテリジェンスの主張を一笑に付した。
編集長はまた、彼女が内部告発サイト、ウィクリークスの著名な創始者であるジュリアン・アサンジ氏と会っていたとの報告書内にある記述についても、次のように書いている-
「私は、何度かアサンジ氏と会ったことがあります。それは、エクアドル大使館の入り口前に設置された監視カメラで確認できるでしょう。私自身もTwitterの中で、たくさん書きました。ロンドンで会いましたよ。私は、会ったことを決して隠していませんし、その事をソーシャルネット上に書きこんでいます。」
さらにシモニャン編集長は、ブログの中で、米諜報機関の報告書について、次のようにコメントし冷笑した-
「ロシア大統領府のアレクセイ・グロモフ第一副長官は、実際私のクレムリンにおける接触相手です。私達はよく会いますし、時にはバーに行ったりもします。私は、ドイツビールが贔屓ですが、彼は国産ビール党です。以前彼は、森にキノコを採りに行った帰りがけに、私の家に寄り、白キノコを一籠おいて行ってくれたことがありました。私達の住居地区の監視カメラがチェックしていますから、この事実を確認することができます。その後、私のところには、現職の米国務省の職員の方も、お客に見えました。グロモフさんから頂いたキノコを、この方に御馳走して差し上げましたわ。」
米諜報機関の報告書の中で示された情報の数々は、他の多くのジャーナリストの側からも批判を受けた。諜報の専門家が作成した報告書と言うよりむしろ、公開された情報筋からのデータの焼き直しを思い起こさせるしろものでしかない、というのである。