タンボフ市はタンボフ州の州都であり、モスクワから南に460キロほど離れたところに位置している。車なら六時間強、列車なら夜行で一泊と、気軽に小旅行に行ける距離である。タンボフにはツナ川や森を始めとする美しく雄大な自然、たくさんの古い教会、昔のロシア貴族の暮らしぶりがわかるチチェリンの家博物館などの見どころがある。市場に行けば、りんごやじゃがいもといった地元産の農産物を安く買うことができる。ちなみにタンボフ市は、2017年度の公式「ロシアの新年首都」でもある。
長年、ロシアと日本の友好に尽力しているフェドートフさんはタンボフ市と丹波市の「名前つながり」にただならぬ縁を感じ、まずは新年の挨拶にビデオを送るという形でファーストコンタクトをとることにしたのである。
突然ラブコールを送られた兵庫県丹波市は兵庫県の中央東部に位置し、東を京都府と接している。人口は約6万6000人、丹波黒大豆や丹波栗などが有名だ。丹波市総合政策課の広報担当、浜野聖子さんによると、タンボフからのメールはロシア語で送られてきたので驚いたが、偶然にも浜野さんの友人にロシア語がわかる人がいたため、読むことができたそうだ。
露日協会タンボフ支部は、タンボフ国立技術大学広報部の協力を得て、新年挨拶の動画、フラッシュモブを作成した。そのお返しとして丹波市は、公式Facebookに動画と露訳つきメッセージを掲載した。
フラッシュモブの曲にAKB48の「恋するフォーチュンクッキー」が選ばれたのは偶然ではない。2013年当時、「恋チュン」のエキストラ参加型ミュージックビデオが話題となり、会社や自治体で独自のバージョンを作って公開することが大流行した。中でも「恋チュン丹波市バージョン」は約13万5000アクセスと、自治体の動画としては驚異的な閲覧数を誇った。フェドートフさんはそれを把握した上で、丹波市民に喜んでもらえるように、あえてこの曲を選んだのである。
丹波市バージョンは、すべてをiPhoneで撮影し予算ゼロ円で作ったとは思えないほどの出来栄えで、丹波市の名所と人の温かさが伝わる微笑ましい作品になっている。
タンボフと丹波市の交流はスタートしたばかり。まだまだ一般の日本人には遠い国のイメージがあるロシアだが、市町村レベルでの地域間交流が少しずつでも深まることを応援したい。