訪問のプロローグとなったのは、トランプ大統領と中国の習近平国家主席の電話会談だった。その中でトランプ大統領は、米中関係の主要な問題に明確な答えを与えた。米政府は、1970年以来受け継いできた「一つの中国」という政策を確認し、台湾との関係における政策の変化に関し出ているあらゆる憶測を、払拭しつつある。トランプ大統領は、自身のツイッターの中に「昨日の夕方、中国のリーダーと会談した。とても建設的な話し合いだった。我々は、うまくやっていくと思う。その事は、日本を含めた地域全体にとってプラスになると思う」と書き込み、さらに日本政府に対しては「アジア太平洋地域において一方的な親日政策はとらない」事を示唆した。同盟国への相反するあいまいな態度という点では、オバマ氏の立場と大変よく似ている。
また経済領域においての合意でも、センセーショナルなものはなかった。安倍首相の言葉によれば「双方は、二国間のさらなる経済関係深化に向け、対話のための新しい枠組みを作り出すだろう」とのことだ。トランプ大統領はTPP(環太平洋パートナーシップ協定)を葬った。確かに米国市場での日本企業にとっての新しい可能性は、この協定と共にあった。しかし、このアイデアに対し、大統領選挙でトランプの対立候補であったクリントン氏も冷淡だった。彼女は、1年前に合意に達した合意の見直しもあり得ると主張していた。日米自由貿易ゾーン創設に関する交渉が行われるかどうか、このアイデアが、トランプ大統領が日本側のせいであると非難している、日米貿易不均衡や円安操作克服に向けた政策に含まれるのかどうか、今のところ明らかではない。恐らくこうした問題すべては、今後に残されるだろう。
今回の会談では、安倍首相とトランプ大統領との個人的な温かな信頼関係が、極めてはっきり示された。昨年のオバマ前大統領の広島訪問、安倍首相のハワイ訪問でも友情が示された。今回のワシントン公式訪問も、日米首脳同士の関係としては、何ら例外的なものではない。
その一方で安倍首相の米訪問の肯定的結果は、露日関係において好ましいファクターとなるだろう。ホワイトハウス報道官は、安倍首相の訪米前に「我々は、日本がロシアの隣国として、ロシアとの二国間関係を極めて重視していることを無条件で理解している。米国は、それを尊重する」と述べた。彼によれば、米政府は「安倍首相がロシアとの協同行動を優先することに干渉するつもりはない」とのことだ。
そうした米国の新しい立場は、露日関係発展にとって、新しい可能性を開くのかどうか、時がそれを教えてくれるだろう。