中国当局は、この状況はまず中国の安全保障問題に触れるとみなしている。中国指導部は、恐らく、この地域における軍事プレゼンスを増強するだろう。しかし韓国牢内でのTHAAD配備との情報が出るとほぼ同時に、中国の対抗措置は、新しい段階に上がったと言える。それは軍事的なものではないが韓国にとって極めて深刻なものだった、つまり経済的な措置が取られたのだ。
韓国のマスメディアは、中国で活動している韓国企業は、中国当局からこれまで前例のない圧力にぶつかっていると報じている。報道によれば、そうした措置は、韓国が自国領内に米国の対ミサイル防衛システム、THAADの配備を決めたことに対する報復である。中国政府は、これまで同システムの配備に断固反対してきた。KBSテレビによれば、中国政府は、韓国の大手企業Lotte所有の商業施設のいくつかの営業を一時停止させた。同社は、THAAD配備のために以前、土地を提供したことがあったからだ。
なお営業一時停止の公的な理由は、消防上の検査で不備が見つかったためとされている。同様の背景で、娯楽施設やアパート建設など一連のプロジェクトが一時ストップしている。これらのプロジェクトに韓国企業は、80億ドルも投資した。
一方中国外務省の耿爽報道官は、韓国領内への米国のTHAADシステム配備を理由に中国当局が、同国内で活動している韓国企業に圧力を加えているとの報道を否定している。スプートニク記者は、ロシア科学アカデミー経済研究所アジア戦略センターのゲオルギイ・トロラヤ所長に、現在の状況をどうとらえているか意見を聞いた-
「THAAD配備に対する中国の反応は、実際のところ、多くの人達が予期していたより激しいものだった。韓国政府が考えていたより、はるかに厳しいものだったことは確かだ。韓国政府は、何とかこうした状況に、言わば『ブレーキ』をかけ、話を始められると見ていた。つまり中国に、米国が自分達に圧力をかけたため若干の不都合が生じたのだと説明すれば済むと考えていた。しかし中国は、公式には激しい声明は出してはいないが、レバーをフルモードにした。すでに現在、韓国ビジネスが受ける損失が数十億ドルにのぼることは明らかだ。なぜならLotteの99のセンターのうち25はすでに閉鎖されているからだ。ソウルを訪れる中国人観光客も、小売部門の利益のかなりの部分を占めてきたが、観光客が減るとなれば、韓国経済と韓国の威信にとって深刻なダメージをもたらすだろう。しかし私が思うに、こうした状況は、始まったばかりに過ぎない! 中国自身、そうすることで経済的に失うものはほとんどないという点も、かなり重要だ。中国政府は、常に世界市場で、韓国ではなく別の国から必要なものを買うだろう。主に経済的損失をこうむるのは、他ならぬ韓国なのだ。それゆえ状況は、韓国にとって、実際困難なものとなりつつある。韓国政府はすでに、自国領内におけるTHAADの配備を拒否することはできない。そしてそもそも韓国では、権力の真空状態が続いている。新しい政府がいつ形作られるのかも、分からない。それができたとしても、新政府は非常な重荷を背負わされることになるだろう。私が今はっきり感じているのは、韓国は今のところ、この問題において中国に妥協できないだろうという事であり、今後も何十億ドルもの損失をこうむらざるを得ないという事だ。」
現時点ですでに「中国の回答」により、韓国の食品産業や化粧品産業にも影響が出ている。韓国から入って来る商品は、綿密な税関検査や衛生検査を受けており、そのため市場に出るまでの期間が長くなってしまった。これによって特に生鮮食料品などは、大きな損失をこうむっている。