4月12日は、人類史上初めて宇宙飛行がなされたことを記念して、世界中で、航空・宇宙飛行学の日が祝われている。1961年のまさにこの日、ユーリー・ガガーリンは、宇宙船「ヴォストーク」に乗って「バイコヌール」宇宙船発射基地から、宇宙空間へと旅立ち、地球周回軌道上へと入った。この日については、数多くの本が書かれ、フィルムも撮られているが、この日に関する私の、ちょっとしたお話を皆さんに御紹介したい。
1962年、世界一周旅行の時、世界初の宇宙飛行士 #ガガーリン が来日して、暖かいもてなしをうけた。#ロシア #日ロ関係 #宇宙 pic.twitter.com/yN7rmguWgA
— 駐日ロシア連邦大使館 (@RusEmbassyJ) 12 апреля 2017 г.
4月12日は、あまり知られていないが(おそらく日本では全く知られていないと思う)、ロシア正教の祝祭日で、聖イオアン・レストヴィチニクの日だ。彼は、6世紀から7世紀にかけて生きたキリスト教の神学者、哲学者で、信者や文学史愛好家の間では「レストヴィツァ」(古代スラヴ語の「階段・はしご」という言葉)という本を書いた人物として有名だ。この本は道徳的自己完成に向けた一種のガイドブックのようなものである。
イオアンは、自分の著作の中で、それに沿ってキリスト教徒が理想の高みに登るべき段階として、30の徳を示した。
4月12日にはまた「レーセンキ(階段)」というクッキーを焼く習わしがあった。現在この伝統は、熱心な正教徒の間でのみ受け継がれている。パン生地をこねて2つの「ソーセージ」状のものを作り、それらを互いに平行に置き、その上に梯子段のようにピロシキを並べるもので、家族のメンバーそれぞれのために、これを焼くことになっていた。
おそらく読者の皆さんは、それにはどういう意味があるのか?とお聞きになるに違いない。私は、この昔からの伝統とその後の歴史的出来事との間に、驚くべき一致があることに気付いた。クッキー「レーセンキ」は、徳を重ねて天空に将来登ってゆくために焼かれた(もちろん隠喩的なものだが)。そして1961年、伝統に従って正教の信者達が聖イオアンを記念し、この天空への「階段」を焼いていた、まさに4月12日に、人類初の宇宙飛行が成功したのだ。もちろんそれは、キリスト教徒達が想像していたような形ではなかったが… ユーリー・ガガーリンは、直接的な意味で肉体を持ち血の通った人間として初めて、天空に向け飛び立ち、さらに宇宙空間にまで至ったのだ! 宇宙飛行学の日は、人類史上、最も偉大な達成を記念した日だ。確かに道徳的あるいは精神的な突破口を開いたとは言えないかもしれないが、それでも人類の新しいページを開いた。 一方現在イオアン・レストヴィチニクの祝祭日は、ほとんど知られていない。私自身も、このブログを書く準備をしていて初めて知った事だった。
とはいえ、12日のこの一致は、私達を考えさせないではおかない興味深いパラドックスではないだろうか?
読者の皆さん、航空宇宙学の日、おめでとう! そして皆さんが今知ることになった聖イオアン・レストヴィチニクの祝祭日に幸いあれ!
ダリヤ・グリバノフスカヤ