この一週間ずっと、世界中の専門家達は、競うように戦争のシナリオを書いてきた。しかし、パニックとなった大部分の人達は、根本的な過ちを犯していた。彼らは、北朝鮮には実際、ウクライナやシリアにあるものと同様のものが存在する、ただこの国は世界の別の端にあるだけだと捉えている。これについてミルザヤン准教授は「北朝鮮をめぐる紛争は、実際のところ、他とは違っていて、高いレベルの脅威が存在するが、恐らく現実的に戦争が始まる可能性は低い」と指摘している。
朝鮮半島では皆、互いに相手を憎み、脅威を交換し合っているが、当事者の誰にも、最初に攻撃をする用意がない。
北朝鮮のエリート達は、朝鮮半島で戦闘が起これば、ピョンヤンが占拠されて終わることを理解している。一方、米国も日本も韓国も、ピョンヤン奪取には、極めて高い代価が必要であること、ことは、動機づけられた百万規模の北朝鮮軍を殲滅する過程で同盟国が受ける軍事的損失だけでは、さらには核兵器が使用された場合の汚染だけでは済まないことをよく理解している。
第一に、戦争が始まった場合、北との国境線から50キロしか離れていない韓国のソウルは、北の長距離砲の射程に入っており、もはや首都とはなりえない。
そして最後に、中国は前回の戦争に参戦し、米国の核兵器を前に当惑することもなかったが、今度戦争が起こった場合、中国が北朝鮮を守るため参戦しないという保証はない。
北の核施設を攻撃すると言った限定的な攻撃というシナリオも、受け入れられない。というのは、そうした施設の大部分は地下にあり、硬い岩盤に守られているからだ。それゆえ米国の専門家らは、基地を殲滅できるかどうか保証できないとしている。また北朝鮮の核施設に攻撃がなされた場合、北当局は、それを戦争の開始とみなし総反撃に出、さらには金正恩委員長にビンタをくらわせたもの(侮辱したもの)として、同等のお返しをし、そうした事で事態はエスカレートし、米国や韓国からの反撃を呼び、ついには本格的な戦争に至るだろう。まさにそれゆえに、米大統領の誰も、北朝鮮への攻撃を決断しなかったし、朝鮮半島でどんなに大きな危機が生じても、それが戦争にまで発展する事はなかった。