日本人の平均身長はアジア諸国の民族のそれと同様、欧米人に比べて低いことは歴然としている。史学者によると、明治・大正時代には大勢の日本人がこの差異に劣等感を抱いていたらしい。だが今は日本人はこのコンプレックスを克服したようだ。Mynaviというウェブページの日本人の女性を対象にした自分の理想の身長をたずねるアンケートでは、「普通とか小さめが理想か」という問いに「女の子はやっぱり小さいほうがモテるような気がする」という回答があったものの、やはり多くの回答者が「平均身長より高いほうが理想だ」という考えていた。
初めて来日したのは2015年12月のころ。行く前に友だちが口をそろえて「人ごみでぜったい1人だけ目立つね」と冗談をとばしたが、私は気にしなかった。ロシアでも背が高すぎると思われていたからだ。さて日本に到着し、初めてホストファミリと出会ったときの反応は「ええええ! 背、高い! びっくりした! ベッドが短いかも。そしたら机を置いて足そうか。」この夜、私はベッドには無事におさまったが、高すぎる身長による日本での苦労は始まったばかりだった。
東京で住むアパート、ドアの高さは私の背より約7センチに短い。メトロに乗れば、開いたドアの上部フレームがちょうど私のおでこに当たる。正しいサイズの服と靴を探すのは無理だ。それに車両に乗り込んだとたん、びっくりして私を眺めるみんなの視線にぶつかる。日本人の友達が尋ねることといったら、私の「秘密」のことばかり。みんな、私が背が高くなるため子供のころに特別な運動をやったんじゃないか、秘薬を飲んだんじゃないかとかんぐっているのだ。一番不快なのは、この背の高さが私が日本語が話せ、日本の文化が分ることにもかかわらず、やはり日本人と私の間に破壊しがたい壁を立ててしまうことにある。
とはいえ、この不快感、私が心から愛し、日をおうごとに親しみも魅力も増すこの国の暮らしを存分に味わうのに果たして妨げになるだろうか?
P.S. ちなみにうちの夫の身長は195センチ…。
アナスタシア・フェドトワ