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このビーツの鮮やかな色を生かしてユニークな商品開発を行っているのが、鳥取県にあるブリリアントアソシエイツ株式会社だ。同社はピンク華麗(カレー)やピンク醤油などの、食卓を彩る「華貴婦人」シリーズを展開している。筆者が初めて華貴婦人シリーズを目にしたのはモスクワ。日本産品をPRするイベントにて、ひときわ異彩を放ち、ロシア人たちの注目を集めていたのである。ロシア人にとってビーツは身近な野菜でありすぎるが故に、味ではなく色に注目するという新しい使い方をかえって思いつけなかったのかもしれない。
華貴婦人シリーズで最初に開発されたのはピンク華麗だった。実は鳥取は世帯あたりのカレールウ消費量が日本一であり、カレー王国としても認知度を高めている。鳥取のイメージカラーのピンクとカレーとのコラボは必然だったと言ってよい。今ではピンク=華貴婦人のイメージはすっかり定着し、ブリリアントアソシエイツが経営する鳥取山の手の古民家カフェ「大榎庵」まで、海外からわざわざ食べにくる人もいる。ピンク華麗がお目当ての男性の一人客も増え、ピンク・ファンの裾野が広がってきた。ピンク華麗の発案者、ブリリアントアソシエイツの福嶋登美子社長は「これも全てビーツのおかげ」と話す。
福嶋社長「ピンク華麗を思いついた当初、鳥取にはビーツがなかったので、取り寄せしてみたらとても高価でした。北海道でさえもビーツ収穫量は少なく、数字に出てこないほど。そのビーツをもし鳥取で栽培できたら新しい名物になるのではないか、これはチャンスかもしれないと思いました。種を買って自社菜園で栽培してみると、丸々としたビーツができました。しかも年に3回作ったら3回とも収穫できたのです。土のおかげもあると思いますが、鳥取の気候に合っていることがわかりました」
生産量の拡大に伴い、現在は自社菜園ではなく、ブリリアントアソシエイツの契約農家で栽培を行っている。品種は「デトロイト」だ。デトロイトは古くからあるアメリカ発の品種で、ジューシーで果肉もやわらかく、甘くて美味しい。たくさんの実がなり、病気に強くて長期保存が可能なことから、家庭菜園を趣味とするロシア人の間でも人気がある。ロシアではデトロイトの他、「ボルドー」「ボヘミアン」など、様々な品種が流通しており、その数は日本の米の品種なみである。
ブリリアントアソシエイツのユニークなアイデアは高い評価を受けており、第11回ニッポン新事業創出大賞最優秀賞経済産業大臣賞を始め、様々な受賞歴がある。ピンクマヨやピンクわさびといった新製品が出るたび話題を集め、ビーツの栄養価への注目度も高まり、種を買い求めて自分で栽培する人も増えてきた。
今年2月のロシアにおける商談で大好評を得た華貴婦人シリーズのうち、既にピンク醤油とピンクわさびがロシアへ輸出された。ロシアでは盛大に祝われている3月8日の国際婦人の日が迫っていたこともあり、女性向け特別メニューのために「今すぐ欲しい」という熱い要望があったことも追い風になった。
福嶋社長は「ロシアはロマンのある素敵なところ。ビーツがこんなに馴染みがあって、反応の良かった国は初めてでした。今後もロシアを訪れ、もっと日本食に親しんでいただけるように食文化を伝えていきたい」と話している。