スプートニク日本
この一年で得られた重要な結果は、両国がともに、両国関係の改善に役立つようにと、特に複雑で病的でもある具体的なテーマに沿って活動し始めたことだ。それはつまり、南クリルでの共同経済活動だ。
ロシアは昨年12月に初めて、国後島と択捉島を含む4つの島々で共同経済活動をすることを提案した。国後島と択捉島は1956年の日ソ共同宣言には含まれていない。一見これは瑣末なことのようだが、それでいてロシア政府の善意が示された、とても重要な一歩である。
しかし、この経済活動がどのような法律に基づいて行われるのかは未だに明らかにされていない。そして安倍首相の4月のモスクワ訪問は、この問題が停滞しているということを立証することになった。ロシア政治の専門家である新潟県立大学の袴田茂樹教授は、スプートニクのインタビューに答えた中で、次のように述べた。
「首脳会談後の記者会見を見ても、肝心のこの点について何らかの合意ができたとは思えません。ということは、この深刻な対立が基本的に残っているということです。これでは、日本の企業関係者が島を訪れ、日本人が長期間そこで生活しつつ経済活動をする、というのは非常に難しくなります。たとえ法的問題がなくても、困難はあります。かつて、北海道の苫小牧に工業団地を作る計画が実行され、数千億円を費やしてインフラを整備し企業への優遇措置を講じましたが、企業誘致には失敗しました。ましてや、それ以上にインフラが整っておらず、かつ法的にも難しい問題を抱える北方四島に積極的に進出しようという日本企業があるとは思えません」
さて、より一層複雑な問題は、南クリルにおける軍の活動である。まず第一に、我々が現在目にしている日本と米国の安全保障上の協力の強化のために、島が日本に引き渡された場合に、そこが非軍事地域となり、米軍や自衛隊の基地・施設等が設置されないということが疑わしくなっている。日本が南クリルにそれらを設置しないという保証はどこにもない。しかしロシアにとってそんなものが必要だろうか?南クリルにミサイルシステム「バル」と「バスチオン」が配備されたことを考えると、南クリルはロシアの戦略的な核防衛(カムチャッカの基地とオホーツク海に配備されている水中原子力ミサイル搭載艦)の一要素とみなされていることがわかる。それはアメリカとの戦略的なバランスを保持するためである。
米国と日本のミサイル防衛システムが極東地域において発達するにつれ、南クリルのミサイルシステムの戦略的な意義は増すばかりである。地域的な観点でもグローバルな観点でも、ロシアと米国の関係においてクリル諸島の戦略的意義が変化するように、非常に真剣な前への一歩を踏み出すことが必要だ。しかし今のところその様子は窺えず、むしろ逆に、露米関係の劣化はノンストップだ。トランプ氏の政権下で、前進が起こるかどうかはわからない。
重大な国際問題において、ロシアと日本の強調は、うまくいっていない。じゅうぶんに予期されたことだが、日本はシリア問題を協議した先日のG7 外相会談で、反ロシア決議を支持した。そしてまた北朝鮮に対する両国の姿勢は大きく食い違っている。日本は、軍事行動を含む「全ての選択肢がテーブルの上にある」としている米国の立場を支持している。ロシアは軍事行動で圧力をかけることには反対し、北朝鮮との対話を望んでいる。これはクレムリンの基本姿勢であるというだけではない。日本の軍艦によってその力を増した米国の空母「カール・ヴィンソン」が、ロシア国境とウラジオストクの軍港にぎりぎりまで近づいたことに対するリアクションなのである。同様に、ロシアの極東における対空防御の戦闘準備がなされたのは、まさにこのためであって、北朝鮮のミサイル実験のためではない。
このような露日関係を「信頼関係がある」と呼ぶことは難しい。この条件下において日本が南クリル問題における現状を変えるためには、非常にたくさんの努力をしなければならず、かつ全く今までになかった新しいアイデアを出さなければならない。