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ストノーギナさんは「日本におけるおもてなしの文化は300年、ロボットの文化は200年あり、テクノロジーやロボットがとても便利な形で日常生活に溶け込んでいる」と指摘。とは言え、人間的なサービスが省略されているわけではなく、「日本はバランスの国」だという見解を示した。
会場の笑いを誘ったのが、日本の銀行のATMでしばしば登場する銀行員の男女のアニメーションだ。お金の引き出し・振込などの操作が完了すると、画面の中の銀行員がにっこり微笑み「ありがとうございました」とお礼を言ってくれる。その際、肉声が吹き込まれたテープの声が流れる。残高不足や番号間違いなどで取引ができなかった場合は、アニメーションの銀行員の表情は曇る。日本人読者の皆さんには見覚えのある光景だが、ロシア人の目には非常に新鮮に映ったようだ。筆者も、言われてみればロシアで、アニメーションがついたATMを見たことは一度もない。これは余計といえば余計な機能だが、サービスに人間らしさを出すためには必要なことなのである。
ストノーギナさんは、人口知能に対する人々の捉え方も、ヨーロッパと日本では大きく違うことを指摘した。欧州では「人口知能は人類を滅ぼしてしまうのではないか?」と懸念や恐怖を抱くが、日本人はやみくもに怖がらず、人工知能の実用性を重んじている。すでに農業分野では効率よく作物を栽培・収穫するために実用化されているし、国も経済団体も人工知能の活用を支援している。また、ドラえもんやAIBOに見られるように、パートナー、またはおもちゃとしてのロボットが普及しているのも、日本の特徴である。
聴講者の一人、アニメがきっかけで日本に関心を持った高校生のセルゲイ・コズロフさんは、「3、40年ほど前に書かれた、日本についての本を読んだことがあります。今日の講演を聴き、日本社会は本質的には変わっていないのだとわかりました。日本は保守的な国だと思いますが、一方ですごいスピードで新しいものを取り入れているので、保守的と言い切るには大きな矛盾があります。日本人がロボットに対して、心のない機械として捉えるのではなく、一定の敬意を持って接していることがとても興味深かったです」と話してくれた。