ロシア製品の輸出拡大を目指す国営企業「ロステフ」(Rostec)傘下企業のうち、75パーセントは軍需企業だ。しかしロシアは、戦略を変えなければいけない時代が来たことを認識している。ロステフは2025年までに、傘下企業における民生品の割合を50パーセントにまで上げるというかなり挑戦的な目標を掲げている。
ロステフとロシア開発対外経済銀行は、サンクトペテルブルグ経済フォーラム2017で新会社「コンヴェルシヤ」(ロシア語で民需転換、の意)の設立を発表。軍事技術を民生品製造に応用していくことを内外にアピールした。同社の課題はひとまず、ロシア国内で民需転換を図っていくことだ。スプートニクはロステフの特別委任取締役、ワシーリー・ボロフコ氏に話を聞いた。
ボロフコ氏「これまでロシア国防省からの注文に従っていただけの軍需企業には自力でビジネスを発展させるノウハウがなく、アフターサービスの概念も希薄です。企業文化も変えなければいけないし、ライバル企業のリサーチや正しいマーケティングのためには、コンヴェルシヤの力が必要です。コンヴェルシヤの最初の仕事は、ヤロスラヴリ州におけるスマートシティ・プロジェクトです。エコな都市環境作りのために必要となる製品のうち7割は、軍需企業から調達されることになります」
先駆的な成功例もある。ロステフに属するシワべ・ホールディングス傘下の「ウラル光学機械工場」は新生児用医療機器を製造し、ここ5、6年で一気に世界市場に進出。発展途上国への販売はもちろん、スイスに輸出を始めて2年になる。関係者は「スイスの私立病院で導入されているということは、性能・価格面で、世界で競争できる製品だということ」と話す。
ロシアの日本におけるイメージはかなり悪い。昨年12月に発表された内閣府調査によれば、ロシアに親しみを感じない人は76.9パーセントにものぼった。そんな日本では、一般人がメイド・イン・ロシアの製品を目にする機会はほとんどない。スプートニクは「いくらロシアが優れた製品を生み出したとしても、日本人には心情的に受け入れられないのではないか?ロシアのイメージを上げる必要性についてどう考えているのか?」という問いを投げかけた。
ボロフコ氏「私は個人的に日本の大ファンで、家中の色々なもの、歯磨き粉に至るまで日本製ですよ。日本へは何度も行き、長年にわたり日本文化を研究しました。(編集部注:ボロフコ氏はモスクワ大学哲学部出身)日本の哲学や文化、人への接し方というものは私に、日本への好感、日本への愛さえ感じさせてくれます。日本人が有している性質を、私たちロシア人も備えていたら良いのにと思っています。
イメージとは複雑なもので、全ての人は一定のステレオタイプのもとに思考しています。ステレオタイプには世代を超えて受け継がれる静的なもの(メンタリティー、文化背景)と、メディアやPR、映画などに影響される動的なものがあります。PRに関して言えば、ロシアがどんなに良いところか記事を書いたところで、『ロシアの道で熊に会った』という類のニュースに比べたら読者はずっと少ないでしょう。状況はあまりにも救いがたく、米国によるプロパガンダは大変強いものです。今、日露関係はようやく好転し始めました。日本は戦略的なパートナーですから、日本とは仕事を通じて友好を深めたいと思います」