北朝鮮の体制崩壊を期待するのは根拠薄弱

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元米国務副長官のトニー・ブリンケン氏(バラク・オバマ政権で国務副長官を務めた)が朝日新聞の独占インタビューで、米国と日本と韓国、そして中国は北朝鮮の金正恩政権の突然の崩壊に備えて「事前協議を実施」すべきだと述べた。彼によると、中国側はこの提案に何も反応を示さなかったという。ブリンケン氏は、金正恩は朝鮮労働党をベースに権力基盤を固めており、体制崩壊の可能性が高いわけではないが、いつでも起こり得るとの見解を示した。

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このような思索的なインタビューを読めば、北朝鮮情勢に明るくない人は「金正恩体制は崩壊寸前であり」、すぐにでも崩壊するのだと思うかもしれない。しかし、それは現実とは解離している。北朝鮮は数十年にわたり、包囲された要塞の様相で戦争を待ち続けている。このような状況下では、国家権力と指導者個人に反対する発言はいかなるものであれ、即刻、刑罰が下る最も恐ろしい犯罪となる。北朝鮮の歴史は果てしない戦いの歴史である。金正恩の祖父は、まず日本との戦いで、次に朝鮮戦争でも、国を守り抜いた人である。金正恩の父は大洪水、干ばつ、飢饉、国際的制裁中で国民を結束し、さらにミサイルと核爆弾の開発の条件を作り上げた人である。つまり、金正恩には手本となるべき人がいるのだ。

北朝鮮の「体制崩壊」を論じる上で、ブリンケン氏はおそらく自然発生的な国民の蜂起ではなく、目的意識を持った反金正恩クーデターや暴動を想定しているのだろう。しかし、こうした展開がほぼ不可能なことを説明する有力な理由がある。政権が弱体化すれば、ましてや崩壊などすれば、それはいかなるものであれ、北朝鮮が韓国に吸収されることに繋がる。その韓国には「国家治安法」があり、その第3条で「反国家的団体」の首謀者は終身刑に処すと定められている。つまり、北朝鮮指導部に反対して暴動を起こそうとする者にとって、その行動は韓国の刑務所に続く道の始まりを意味するのであり、人々はそのことをわきまえている。このほか、北朝鮮でクーデターを企てたいと考える者がいたとしても、その人物は何の利益も得られないばかりか、今ある特権や手にしているもの全てを失うリスクを負うのである。それは、たとえ暴動が成功したとしても同じだ。何しろ、誰も何も保証してはくれないのだ。

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最後に大切なことだが、国際的制裁の強化にもかかわらず、北朝鮮の経済情勢は決して破局的ではない。ここには大規模な民間資本はなく、零細ビジネスは制裁の対象ではない上、すべての国が北朝鮮に背を向けたわけでもない。世界には「北朝鮮国民の米国帝国主義との戦い」に同情するもあるのだ。

中国はトニー・ブリンケン氏よりもはるかに北朝鮮情勢に通じており、この地域の情勢に対する独自の見解を持っている。そのため、中国指導部が協議に関する提案に何の反応も示さなかったのは、中国のお決まりの自制だけで説明できるものではないのだ。近い将来、金正恩体制の崩壊が不可避であるという考えは、実際の前提条件が不確かであり、その点で間違っている。ちなみに、北朝鮮を扱う協議の提案についてだが、こうした協議はさまざまな形式で常に実施されている。今のところ、成果が見えないのは別問題だ。金正恩は、彼を諫めようとするあらゆる試みをあざ笑うかのように、またしてもミサイルを発射すべく、機会を狙っている。

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