モスクワの状況についてだが、国家道路交通安全監督局の公式データによると、モスクワには206校の自動車教習所が存在する。しかし、これは教材・施設の認定審査に合格した一部の教習所でしかない。また、モスクワ州にも教習所は多い。
ロシア人が運転免許を取得するのに最低限必要な期間は3~4ヶ月である。自動車教習所での教習は必須ではなく、インストラクターを雇って(1時間あたり約1000ルーブル、約2000円)個人で練習し、国家道路交通安全監督局に申請を出すこともできる。しかし、この事実を知る人は少なく、大多数は教習所で教習を受ける。
料金はどの教習所に通うか、マニュアルかオートマかによって異なるが、モスクワの教習所の平均価格は30000~40000ルーブル(60000~80000円)である。教習所の授業は、学科については、通学で受講するほかに、通信でも受講することができる。教習カリキュラムでは学科を134時間、運転技能を54コマないしは56コマ受講する。
国際運転免許証という概念は1923年、1943年、1949年、1968年に開催された国連の道路交通に関する国際会議で策定された。ロシアは1968年のウィーン条約に調印し、日本は1949年のジュネーブ条約に調印したため、日本の運転免許証はロシアでは効力を持たず、ロシアの免許証も日本では無効である。この事実はあまり知られておらず、そのため間違える人が少なくない。ロシアの運転免許証を元に取得した国際運転免許証には日本語の翻訳がついているが、在東京ロシア大使館によると、これでさえも日本国内では効力を持たないという。ロシア人が日本で合法に自動車を運転するためには、以下の3つの方法が存在する。
① 日本の自動車教習所に通う。
② 日本の運転免許取得のための簡易試験を受験する(日本に入国する90日前より以前に取得したロシアの運転免許証を元に、日本の免許証を取得する。)
③ 教習所に通学せず、試験場で一発試験を受ける。
90日というルールは偶然のものではない。日本の法律は取得から90日以上経過していない免許証を日本で使用することを禁じているのだ。これは、帰国後に日本の免許証に切り替えることを目的として外国で運転免許を取得する日本人が出ないようにするためのものである。ロシアに同様のルールはないが、外国の運転免許証はロシア国内では60日で有効期限が切れるため、長期滞在するのであれば、ロシアの運転免許証を取得する必要がある。
ロシアで運転免許を取得するのにロシア国民である必要はなく、ロシア国内に合法に滞在していればよい。運転免許を取得するには、もしすでに運転免許証を持っているのであれば、新たに試験を受けるか、あるいは試験練習のためにロシアの教習所に通学する必要がある。