なお公平を期すために述べておくが、国連に不満を抱いているのは米国だけではない。国連は膨大な予算を持っているが、官僚主義や不適切な運営でその潜在能力が開花されていない。そしてこれは国連改革の数多くある項目の一つであり、これに反論する人は誰もいない。国連改革に関するトランプ大統領の宣言を、国連加盟国193カ国のうち143カ国が支持したのも、それが理由なのかもしれない。
一方、政治学者で政治学修士号を持つゲヴォルク・ミルザヤン氏は、宣言が承認される前にそれを目にした者は事実上おらず、事前に議論もされなかったことを考えると、このような早急な判断は驚きに値すると指摘し、次のように語っている-
「宣言のテキストは、事実上、国連総会の一般討論演説が始まる日に米国の国連使節団のサイトに掲載された。テキストは不可解なものに思われる。非常にあいまいであり、具体的ではないからだ。そして今日すでに、事前の議論なしに宣言に署名した国が、今後困難な状況に陥る可能性があることは明白だ。」
ミルザヤン氏は、その陰謀とは国連レベルで重要な決定を行う際の国際的なルールを変更することだと指摘し、これが国連改革に関する会合にロシア代表が出席しなかった理由の一つだと述べ、次のように語っている-
「陰謀の本質は、加盟国が国連の主要機関を含む権限の重複の削減を義務付けられている項目にある。国連の最も重要な機関は安全保障理事会だ。ロシアがこの項目に署名した場合、今後行われるかもしれない国連安保理改革をロシアが支持するとみなされる可能性がある。米国がそれを強く望んでいるのは明らかだ。なぜならロシアは国連安保理の拒否権を持っているからだ。そのため過去に米国が提案した多くの決議案が先へ進まなかった。少なくとも米国では、拒否権を廃止あるいは変更するという考えがずいぶん前から煮詰まっていた。例えば、『アンコールにこたえる』(誰かの要望によって拒否権の行使を繰り返す)ことができるのは一度に2カ国のみだ。この場合のみ拒否権が機能する。そのため国連改革に関する今回の米国の宣言は、徐々にその下に必要な法的基盤を築いているのだ。」
現在、国連安保理の拒否権を有しているのは常任理事国の英国、中国、ロシア、米国、フランスの5カ国。ミルザヤン氏は、拒否権を廃止できなければ、米国は国連安保理でドイツや日本という新たな同盟国を用意するだろうとの見方を示し、次のように語っている-
「現在の国連安保理メンバーは、第二次世界大戦終結の時期の軍事構成、事実上の戦勝国を反映している。今この力の配列が変わったことに反論する人は誰もいない。現在、日本とドイツも国連安保理常任理事国入りを希望し、可能であれば拒否権を得ることを望んでいる。問題は複数の国が反対していることだ。例えば、中国は国連安保理に日本だけでなく、インドが入ることにも反対している。フランスは、ドイツの国連安保理入りを望んでいない。」
さらに国連予算に他国より多い金額を収めているという米国の大げさな訴えを、まったくもって見当違いだと考える国もあるかもしれない。それは、国連分担金はそれぞれの国のGDPと関連しているという単純な理由からだ。小国は米国と同じ額の分担金を支払うことはできない。単にそのような国にはそれだけのお金がないのだ。なおこの分担率は、米国も出席した国連総会によって承認された。
記者団は国連総会の場でトランプ氏に、国連にどのようなシグナルを送りたいか質問した。トランプ氏は「米国を再び偉大な国に」という自身の選挙スローガンを言い換えて、「国連を偉大に」と述べた。このスローガンに反対する人は誰もない。だがそれはもちろん、国連改革で、米国だけでなく、すべての国の意見が考慮された場合の話となる。