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自治政府が9月に独立を問う住民投票を強行したことによる対立と緊張が、過去最悪の段階に高まっている。双方とも本格的な武力行使には慎重な姿勢を示しているが、偶発的な交戦など混乱が深まる恐れがある。
中央政府は、軍が油田やペシュメルガの陣地を掌握したと主張したが、自治政府は否定した。キルクーク市内は平穏な模様だ。
国営テレビによると、アバディ首相は軍に「ペシュメルガと協力し、キルクークの治安を改善せよ」と命令。対立回避を望む意向もにじませた。米政府は、事態を悪化させる行動を避けるよう双方に呼び掛けた。
キルクークは自治区の外側にあるが、NHKによると、キルクークはイラク中央政府とクルド自治政府が長年その管轄権を争ってきた地域で、過激派テロ組織「ダーイシュ(IS、イスラム国)」が勢力を広げた3年前、撤退したイラク軍に代わってクルド側の部隊が展開し、そのまま実効支配を続けている。9月に一方的に行われた独立を問う住民投票では、このキルクークでも投票が行われた。
中央政府は15日、自治政府がトルコの非合法武装組織「クルド労働者党(PKK)」と連携し、キルクークにPKK部隊を動員しているとして「イラクに対する宣戦布告だ」と批判。自治政府は即座に否定した。
クルド独立機運の拡散を恐れる周辺諸国も強硬な姿勢を強めている。イラク外務省によると、イラン政府は15日、クルド人自治区との国境を閉鎖した。トルコのエルドアン大統領も国境閉鎖を警告している。
住民投票は投票率が70%を超え、独立賛成票が約93%に達した。中央政府は投票結果を無効化するよう要求しているが、自治政府は15日、拒否することを確認した。