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好景気のときほど入隊者は少なくなります。例外的リストを拡大したのは、新兵数が少ないという内情によるものです。新兵不足に対する過去と現在の反応なのでしょう
スプートニク:つまり経済的な背景が他の要因よりも勝っていると。
リッチー博士:そう、経済です。それに我々は2001年9月11日以来、16年もの間戦争状態にあります。そのためもあり、新兵数を増やす必要があるのです。
スプートニク:精神的な問題や障害を抱えた新兵にはどのようなリスクがあり得ますか。貴方は2010年まで米軍大佐の職にいらしたため、多くのご経験があると思います。入隊前から既に精神障害のあった人々にはどのような問題があったか、話してもらえませんか。
リッチー博士:精神障害にも様々な診断があるため、まずは線引きをさせてください。例えば、統合失調症や双極性障害の患者は即座に入隊不適格者と認定されます。
一方、多くの兵士には心的外傷後ストレス障害(PTSD)やうつ病の病歴があります。しかしこれらの病歴を持つ人が入隊することで、病気が再発する可能性は高まり、その勤務状態にも大きな影響を及ぼしかねません。
スプートニク:兵士の精神状態が良好でないとき、戦闘中の行動には何らかの影響があるのでしょうか。同僚兵や住民に対する犯罪を犯すリスクは高くなるのでしょうか。
リッチー博士:ええ、高くなります。自殺未遂や自殺そのものに至ることがよくあります。軍司令部はこの問題に取り組んでいます。ですが、当然のことながら、「声が聞こえる」という兵士がいるとき、その兵士には戦闘部隊を率いて欲しくないものです。
2つの有名なケースがあります。1つ目は、アフガニスタンで勤務していたボウ・バーグダール(Bowe Bergdahl)軍曹の件です。私が本人を診察したことはないのですが、記録資料から彼に「声が聞こえていた」ことは明らかになっています。バーグダール軍曹は米軍基地を立ち去った後タリバン勢力に拘束され、5年間もその捕虜となっていました。多くの米軍兵は彼の捜索のため命を落としました。
2つ目のケースは、同じくアフガニスタンでロバート・ベイルズ (Robert Bales)二等軍曹が現地住民に対して起こした銃乱射事件です。彼が、一時的なものとは言え、精神的な障害に苦しんでいたことは明白でした。
スプートニク:精神障害を持つ兵士と共に従軍することは軍隊の士気や他の兵士たちの精神状態にどのような影響をもたらす可能性がありますか。
リッチー博士:多くの兵士がPTSDに苦しんでいますが、軍役を続けることは可能です。ですので、全てをひとまとめにするつもりはありません。とは言え、明らかに不適切な行動をしている人がいる場合、そのような人と戦闘は共にしたくないでしょう。
貴方がご質問されなかったことですが、もう一つ問題があります。それはこれらの病気の治療費は納税者の負担になるということです。入隊後、精神的健康状態の悪化で不適格とされた場合、その支出は納税者にとって高くつきます。ですので、通常は身体的または精神的な障害のある人は召集しません。新兵が満たすべき入隊基準というものが存在しているのも、それに適合しない人に例外を設けないのも、そのためでもあるのです。