ロシアからこんにちは!~「俺は先へ進み続ける」

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かつては軍のヘリコプターの操縦士で、チェルノブイリ原子力発電所事故の時には現場で活動した。刑務所で犬の訓練士を務めたり、プロのドラマーとして活動したこともあった。ギターやアコーディオン、ピアノもプロ並みの腕前。オフロードバイクは大会で優勝するほどの実力者だ。他にも好きなこと、得意なことはたくさんある。そんなパーヴェル・バーリノフさん(51)は「俺はドゥラーク(ばか、あほう)なんだ」と語る。恐らく、おもしろいことを見つけるとそれにとことん打ち込み、世間体や安定よりも自分の好きなことを優先して生きてきたことを言っているのだろう。

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そんなバーリノフさんが今「夢中」になっているのは、家具づくりだ。ある時、友人から家具屋で仕事をしないかと声をかけられた。はじめは家具の配達を担当した。その後はおよそ60人の職人を抱える家具屋のオーナーとなったが、家具を仕入れて売るだけでは物足りなくなり、自分も家具づくりを始めた。そして今は信頼できる職人たちとオーダーメイド家具をつくっている。大量生産ではなく、世界に一つしかない家具だ。また家具の修理も行っている。例えば、100年以上前の貴重なアンティーク家具のみならず、特に高価でもなくもう処分するしかないようなボロボロのソファー、脚などが折れてしまった椅子やテーブルなども蘇らせている。どうしてなのか?家具には思い出があるからだ。小さい頃に面倒をみてくれた祖母がいつも座っていた椅子、家族みんなで囲んだテーブル… 他人にとってはゴミでしかないようなものでも、そこには思い出が詰まっている。ロシア人たちは、そのような「愛着」を大切にする。

バーリノフさんは、この仕事で収入を得て生活しているが「お金のために働いているんじゃないんだ。皆からの『ありがとう』が嬉しいんだ」と語る。だから仕事の質には徹底的にこだわる。

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モスクワ南部にアトリエを構え、休日もとれないほど注文が次々と入る人気家具屋のバーリノフさんだが、経済不況の影響ですべてを失い、途方に暮れて毎日泣いて暮らした時期もあったという。だがバーリノフさんは言う「俺は立ち止まらない。人生とは常に穏やかな時期が続くわけではない。でも俺は先へ進み続ける。行動すること。それが人生なんだ」と。

人と接するのが大好きだというバーリノフさんは、特に若者に優しい。辛いこと、悲しいことをたくさん経験してきた。だからバーリノフさんは、まだ何も知らない純粋な心を持った若者たちが騙されたり、裏切られて傷つくことがないようにとアドバイスをする。そして彼らが人としての心を忘れることなく、自分らしく生きていくことを願う。バーリノフさんからは、懐の深さや人間的な温かさが感じられる。

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