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工事の遅れの原因はジャパンタイムズの報道によれば建設工事委員の人手、建材の不足だけにあるのではない。地元住民からの苦情も足止めになっている。当初は住民側は工事に支持を示したものの、いざ工事が始まってみると多くの人があからさまな不満を表し始めた。壁はあまりにも高さが高く、市民が慣れ親しんできた海辺の景色をふさいでしまう上に、漁師らが船を出すのもままならず、町に暮らしていても閉塞感に悩まされ、あたかも刑務所の中にいるように感じてしまう。また観光客がコンクリートの壁に驚いてしまうだろうと心配する声もあげられている。こうした苦情が相次いだため、工事は32か所で見直しがなされることになった。いくつかの壁には小さな穴があけられ、それを通じて海をのぞむことができるようになった。
「海とともにみんな生きてきた。ずっと代々。この防潮堤ができることによって、その海と決別するような生活をこれからしていくというのは、われわれはどうしても耐えられない」と、臼井壮太郎さんは語った。
「塀の中で働いているような感じ。悪いことしたわけじゃないが、牢屋にいる感じ」との藤田あつしさんは言う。
地震とそれに続く恐ろしい津波から身を守るのが津波防波堤の目的だった。あなたならそのために海をこんな高い壁で囲むことをいとわないだろうか。