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トランプ大統領は、前任者のオバマ前大統領が8年前に提案した世界における米国の役割に関するビジョンを完全に葬った。オバマ氏は「米国にとってよいことは、全世界にとってもよいことだ」との原則に従って行動した。米国に同意しなかった政権は、中国あるいはロシアのように強要されたり(引き入れられたり)、あるいは北朝鮮のように孤立させられた。
そしてオバマ氏が協力と引き入れ戦略の枠組みの中で古い同盟を強化し、新たな同盟を形成しようとしたならば、トランプ氏は世界規模で極度の圧力をかけるのを拒否し、外部の危険性から自国を守るために独自の防御を構築している「米国第一」主義である。恐るべき敵がいるという認識は、再び軍事力の立場から話をする機会を与える軍事的潜在力の積極的な増大を意味している。
これらすべての変更は、トランプ政権の概念が述べられている別の文書である防衛戦略と核ドクトリンにも反映されている。さらに重要なのは、理由があろうがなかろうがトランプ氏を容赦なく非難している民主党が一切非難しなかったことだ。米国が近い将来それに基づいて自国の外交政策を行うことになる共和党と民主党のコンセンサスがまさにそうだ。
なお早々に反応があった。2月に開かれたミュンヘン安全保障会議でドイツのガブリエル外相は、アフリカから東欧および中央アジアまでの安全保障を確保するための方策の開発をEUに呼びかけた。ドイツのフォン・デア・ライエン国防相は欧州防衛連合の始動、「欧州軍」と欧州防衛基金の創設に関する政治的合意の達成を発表した。これに関して欧州委員会のユンケル委員長は「我々は欧州の防衛政策において昨年1年間で過去20年間よりも大きな進歩を遂げた」と指摘した。欧州の独立した防衛政策は現実のものとなりつつある。
日本のミサイル防衛(MD)システム「イージス・アショア」やF35戦闘の購入、長距離巡航ミサイル製造、ヘリコプター搭載型護衛艦「いずも」の空母化計画も同じ理論のようだ。これらはすべて防衛兵器ではなく、攻撃兵器だ。米国との軍事・政治的関係が明らかに崩壊している状況の中では、日本の核兵器保有に関する議論の再開も驚きとはならない。
なお、これはまず核兵器使用の可能性が拡大され、核使用の閾値が急激に低下している米国の核戦略の新たな展望の状況にロシアが抱く大きな懸念に関するものだ。プーチン大統領は、ロシアは同国やその同盟国に対する核兵器のあらゆる使用に対して即座に対応すると強調した。
なおプーチン大統領は、代替案は「交渉のテーブルに座り、一新された有望な国際安全保障システムと文明のゆるぎない発展について共に考えることだ」と述べている。米国から独立した政策を示しているBRICSや上海協力機構の枠内で活動するロシアにとって、これは自然な立場だ。
この演説は米国だけでなく、欧州や日本にも向けられている。米国がその世界的役割を放棄している状況の中で、欧州でもアジアでも戦後の安全保障システムに代わるこれまでの国際的義務の再検討や新たな達成に関連する安定性を確保するための構造が必ずや構築されるだろう。そこにおける米国の位置がどのようなものになるのかは、時が経てばわかる。だが米国が同プロセスの完全なリーダーになることはもうない。この文脈において、日本に向けて米国に対する自国の義務をもう一度評価するよう呼びかけるプーチン大統領の提案は、日本との平和条約交渉から撤退するための口実を単に見つけようとしているようには思えない。