スプートニク日本
TPP協定の署名式が開催される予定の国の大統領が日本を訪問したことは偶然ではない。まさに日本が、現在形成されつつある共同体の枠組みにおける最大の経済大国として、今このプロセスの調整役を演じているのだ。トランプ米大統領が参加を拒否したことは、もちろん、合意に対する打撃となったが、他の11の構想参加国は協議を続け、今年1月の東京での会合で、新たな、米国の離脱を考慮に入れて少し修正された協定の署名について合意がなされた。商品販売の基本的市場としての米国の地位を、今後は日本が占める可能性を今や排除することはできない。そして日本にとって、このことには自らにとっての利点がある。TPPによって、食料品や農産・鉱物原料、石油やガス、その他のエネルギー資源の輸入者は、輸入に際して出費を著しく削減できる。協定はまた、日本の投資家にとって参加各国での可能性を目立って拡大させることになる。
この中核地域の立場は、韓国と台湾を参加させることで強化することができる。もし実際に形成されれば、この同盟はマイクロエレクトロニクス市場において最も重要な立場を掌握する大きな勝算を得ることになる。
日本は新たな機構の非公式なリーダーになるのだろうか。時が経てば、米国がTPPに合流することはあり得るのだろうか。そして中国の立場はどのようなものだろうか。「スプートニク」が話を聞いた専門家は、これについてそれぞれ次のように考えている。
米国が不在の間に、TPPを巡る状況を日本が喜んで自らの手に掌握するだろうという印象が出来上がりつつある。というのは、日本の眼前には極めて広大な市場が開けているからだ。米国に続いてどこかの国がこの構想を去るかもしれないとの危惧はあった。そのような国々が主として米国市場に向いていたからだ。しかし、協定の本文は見直されたものの、我々が目にしているように、プロセスは動き始めた。TPP構想には、全ての参加国が何らかの程度で関心を持っている。他の市場参加国と関税なしで取引したいサービスや商品が、参加国それぞれに一揃いあるからだ。『関税なしで』という言葉はTPPのキーワードで、協定の本質を決定するとともに、協定の主な魅力的側面となっている
もちろん、多くの構想参加国、特に米国との特恵貿易協定がない国々にとって、米国の参加は重要だった。そのような国として、まず第一に日本とベトナムが挙げられる。米国の離脱に伴い、協定の本文は修正され、僅かな後退が生じた。つまり、ある程度統合が弱められたのだ。だが、参加各国が自ら表明しているように、協定の質は被害を被っていない。肝心なことは、この協定が戦略的な性格を持ち、規定を創設するとともに地域において貿易・経済活動を行う際の規範を確立する使命を帯びているということだ。もしTPPが始動し、そのメリットが明白になれば、米国がTPPに合流する可能性は排除できない。だが、恐らくトランプ政権でそうなることはないだろう。中国について言えば、構想に招かれなかったことで不快感を抱き、非常に積極的な形で自らの大規模な国際インフラプロジェクトを展開し、また全面的な地域経済パートナーシップを推進するようになった。中国は、自らが有利な立場に立っている間は、プロセスを見守って実利的な政策を続けるだろう
もし仮に中国がどこかの時点でTPPへの加盟を申請した場合、時が経てばTPP経済圏全体が主に中国のものになるかもしれないと分かったうえで、中国を受け入れたいということになるかは疑わしい。それどころか、中国とTPPの間で厳しい競争が生じ、貿易戦争や、経済的性質を持つ軍事・政治的緊張の先鋭化にまで至るリスクがある。そのような状況になれば、TPPは政治的保護者としての米国を必要とすることになるだろう。
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