スプートニク日本
トランプ大統領の目的は、合意の「欠陥」を取り除くこと、とりわけ合意を無期限のものにすることだ。また米大統領は、イランの核施設の査察体制を厳格化し、イランの弾道ミサイル開発に対する制限をJCPOAに結び付けることを主張している。つまり言外に中東でのイランの対外政策の変更を要求しているに等しい。
- 合意の取り消しには成功しない
JCPOAは、国連の安全保障理事会決議第2231号によって承認されており、この文書に変更を加えることができるのは唯一安保理のみ。つまり、合意修正には、これに反対している中国とロシアによる賛成が求められる。問題は、欧州連合(EU)が反対していることにもある。EUのモゲリーニ外交安全保障上級代表は3月19日、まず始めにイランの核合意が成功に終わらせ、その後でイランに対する将来の行動にEUが同意するとの一貫した立場を堅持するよう呼びかけた。欧州は、自らの境界線近くに不安定要因の集中した場所をさらに増やすのではなく、自らの商品と引き換えにイランのオイルダラーを手に入れることを望んでいるのだ。
- 欧州を「説き伏せる」
このことで米国は殊更動揺してはいない。専門家らの認識ではもっぱら、ティラーソン前国務長官とマクマスター前大統領補佐官(国家安全保障問題担当)を辞任させ、その後釜にボルトン元国連大使とポンペオ中央情報局(CIA)長官を指名したのは、まさに欧州を「説き伏せる」目的でこれらの攻撃的な政治家の潜在力を利用するための人事だったとされている。
英仏独の欧州3カ国との交渉の総括について、米国務省のブライアン・フック政策企画本部長は、既にある合意の欠陥を修正する追加合意を5月12日までに欧州と達成するようトランプ大統領が指示したことを明らかにした。米外交官らはスプートニクとのインタビューで、「大統領が欧州との合意が達成し難いと判断し次第、米国は(核)合意から即座に離脱する」と強調している。これは、イランに対する大規模な経済制裁と、軍事的圧力などに訴える別の形式に米国が復帰することを意味する。
- イランの前例
イランはこれに即座に反応をしめした。イランのザリフ外相はあるインタビューの中で、「JCPOAの条件を押し付けることは米国にはできない。トランプ大統領は予見不可能なことを連続して行った結果、他人の信頼を失いつつある。米国での署名が4~8年間しか効力がないならば、誰もホワイトハウスと合意を達成しようとは思わない」と述べた。
自らのミサイル軍備と核兵器保有量の削減に同意するには、北朝鮮には確証が必要となる。この問題にはロシアも注意を払っている。ロシアのラブロフ外相は、北朝鮮の李容浩外相との交渉後、「非核化の文脈における朝鮮民主主義人民共和国の安全保障上の合法的な利益を確保するには、確固たる合意と保証が必要になる」と強調した。「しかし、JCPOAを巡る事態を見た場合、朝鮮半島に関する交渉で求められる保証は、鉄筋コンクリート製である必要がある」ともラブロフ外相は述べている。
そのような保証を与えることができるとすれば、北朝鮮問題に関する多国間交渉の参加国だけであり、中国とロシアが参加している有名な六カ国形式もその一例となる。ラブロフ外相は、「まさにこの形式の枠内で、北東アジアの安全保障と非核化の問題を議論することが不可欠だ。というのは、これらの問題はここに位置する全ての国および六カ国協議の参加国全てに関係するからである」と強調している。しかし今のところ、イラン問題に対するトランプ大統領のアプローチは、北朝鮮の妥協しようとする意欲を深刻に減退させる恐れがある。