スプートニク日本
- 人生の新たな段階について
ー 今年、50歳に達したと思いますが、その年齢をどう認識していますか?あるいは人生の転換、または音楽制作に関して何かを変えて行きたいというように考えることはありますか?それとも年齢はそれほど真剣なものとして受け入れていないでしょうか?
日本で有名な言い伝え、諺みたいなものがあって、「50歳の天命を知る」って言葉があります。いつも生きていって自分が何をしなければいけない、自分が何をすべきかみたいなことを50歳で知るのですよ。50歳なのですけれど、自分がやるべきこと、こういうイメージは何となく自分は理解して、自分がやりたいこととはちょっと違っています。ゲームとか、音楽と人と出会うこととか、文化も人種もみんな違うけれど、自分が出会う人々とその縁、様々な良い縁をどんどん沢山作ってその先の未来の自分と言うのをもっとこう広げたり、大きくしたり、良いものにしたりというふうにできれば良いなぁと50歳という年齢では感じていますね。
ー でも、全然50歳には見えないですよね。(笑)
この間、先月にクエートに行ったのですが、(入国審査で)50歳とパスポートで本当に疑われました。(笑)これ、偽物のパスポートではないかと。
- ロシア訪問の経験について、ロシアと日本の音楽の比較
ー コンサートツアーをあまりしない人だと前におっしゃっていましたが、ロシアは全く初めてではないですね。
そうですね、もう何回来たのかは忘れました。(笑)
ー 2013年、ロシアの国際ホラー映画賞「ドロップ」にゲストとして招待され、ホラー発展への貢献に対して賞を受け取られたこともありましたね。ロシアを訪れることが山岡さんにとって興味深い理由と、ロシアやファンの印象について教えてください。
正直に言いますと、自分でもあまりわかっていないです。よく呼ばれるんです、「是非、来てください」と。何でですかね。(笑)音楽でいうと、ロシアのトラディショナル音楽と日本の昔の音楽はすごく似てるんです。昔、ロシアで日本の音楽がヒットしてたんです。ザ・ピーナッツといった昔の、日本昭和の選曲、50、60年くらいのグループの曲がロシアで大ヒットしたんですよ。ロシアの昔の音楽を聴くと日本の音楽っぽいですよね。その音楽というところでも人の雰囲気、人の人間性とかはロシアと日本はすごく近いです。僕にはそういう印象があって、親近感とかというのでロシアのライブとかファンも日本の人みたいな雰囲気がします。ポーリュシカ・ポーレとかはあれ日本の音楽ですよ。(笑)日本の音楽と作り方が同じだと感じます。ラテンの音楽とかも(共通点)色々ありますけれど、昔のロシアの民謡は殆ど日本の音楽とそっくりです。何ででしょうかね。近いのでしょうかね、どうかシベリアを超えていたかもしれません。
この歌をソ連で最初に歌った歌手の1人となったのが、ニーナ・パンテレーワ。ロシア版の歌詞を書いたのは詩人のレオニード・デルベニョフ。
ー サイレントヒル第1作目(OST 1)でもバラライカによく似た音が聞こえますね。実際にはマンドリンですが。
超似ていますよね、凄く近いです。
- ロシア映画での活動について
ー あなたにインスピレーションを与える数多くの人びとの1人に、おそらく『ツイン・ピークス』で最も知られる(映画音楽作曲家)アンジェロ・バダラメンティ氏がいますね。バダラメンティ氏はロシアの戦争・歴史映画『スターリングラード』のためにも作曲しました。山岡さんは、こうしたロシアのプロジェクトへの参加を提案されたら、必ず受けるとおっしゃりました。言語・文化的な壁にたじろぐことはないですか?コスモポリタン(世界主義者)だと自認していますか?
映画の音楽を作るとしたら、映画のディレクターとか映画を作る人とコミュニケーションを取らなければならないと思うですけれど、そこに関してはあんまり懸念もないし、何とかできるかなぁと思います。サイレントヒルのゲーム、映画では日本人が作ったものは日本人にしか受け入れないとはあんまり考えていなくて、もう世界の人、言葉も文化も違っても人に届けて感動したりとか喜んでもらうことに、あまり自分的にはハードルとして感じてないです。ロシアの作品、ロシア人が作る作品に日本人の僕が入っても別に何かその文化の違いとかは関係なくて、そこで何か面白い爆発というか、ロシア人が作るものに僕が一緒にやることでその作品がまた全然違う、誰も計算していない作品に出来上がると良いなと思っています。ロシアの人と映画の仕事をしたことはないですが、やってみたいです。アメリカとヨーロッパの作品はやったことがあるので、ロシアとやってみたいと強く思っています。
- ヘビーメタルバンド、サバトンに関する面白い話について
ー 昨年、ベラルーシのゲーム「World of Tanks」(ワールドオブタンクス)の音楽制作で、山岡さんはヘビーメタルバンドのサバトンとコラボしました。サバトンのメンバーは、ユーモアのセンスがある人たちのようですね。協働した際の面白い出来事や、サバトンの印象を教えてください。
サバトンを日本の文化に触れさせたいなぁ、と思って、屋形船に乗せました。みんな着物を着て凄く喜んでくれました。その時に、船を貸し切ろうかな、と思ったんですが、凄く人気で貸し切れなかったんです。それでサバトンのクルーと日本のおじいちゃんとおばあちゃんが一緒になったんです。その時に、カラオケをやったんです。50人ぐらいで。それでギターのトミーが歌うと言って、普通カラオケだと日本の演歌とかが歌われているのですが、彼はヘヴィメタルのハロウィンのEagle Fly Freeを入れました。本気で歌いましたよ。(笑)凄く上手かったですよ。でもおじいちゃんとおばあちゃんは「あの外国人、何だ」みたいに思ったらしいですが、おじいちゃんもおばあちゃんも盛り上がっちゃって、凄く喜びました。その後、トミーが歌い終わって、みんな握手しに来ました。(笑)サバトンは凄いエンターテイナーだと思いました。
「World of Tanks」で山岡さんは最近も、感動的なオーケストラ、和楽器、生音と機械音が驚くほどよく調和された美しい作曲「Battle in Japan」を制作した。
- ロシアの建築とデザインについて
ー あるインタビューで山岡さんは、ロシア建築とデザインが好きだと言及されました。もともとは、建築に関係した教育を受けたとお聞きしています。ロシアの建築とデザインの何が具体的に好きなのか、聞いてもよろしいでしょうか。
アーキテクチャーは凄く伝統的で歴史があって積み重なるものだと思います。突然出来上がるものでなくて。ロシアのその長い歴史の中で育まれたその文化の雰囲気が響く、心には凄く来るんです。自分的には凄く興味あって、フィットする感じがあります。ロシア人が描いてきた想いとか感情とかが良く僕に伝わります。
- 「ボルシチに唐辛子と納豆入れたら美味しいかも」:ロシア語の文字がジャケットに入ったアルバムのコンセプトについて詳しく
ー 山岡さんのディスコグラフィーでロシア人の注目を特に引くものとして、ジャケットにロシア語の大文字「Ж」が入ったアルバム「IFuturelist」があります。山岡さんは初期のインタビューでロシアの読者に対して、ロシア語アルファベットに特別な気持ちを持っていて、見た目に強く惹かれたと仰りました。これに関してお聞きしたいのですが、近いうちにロシア語の文字を入れた新しいアルバムを出す予定はないですか?(笑)
(笑)その予定は今ないですけれど、ロシアの人とゲーム、それか映画を作るとか、ロシアの人たちと何かを作りたいという希望はあります。Ifuturelistは僕が単にロシアがちょっと好きで、逆に外国の人が日本語の漢字をタトゥーすることとかがたまにあり、僕もロシアが好きで文字を取り入れたということです。
ー 詳しくお聞きしたいのですが、この初のオリジナルアルバムを作るきっかけは何でしょうか?そのコンセプトは?まずジャケットにロシア語の文字を見て、続いて1曲目はドイツ語から始まり、さらに『スター・ウォーズ』の有名なセリフ「May the force be with you」と続きます。そして音楽は予想外のダンスミュージックです。全てに何かしらの関連性があるのでしょうか?
それぞれの関連性は全く無いんですよ。自分の中から出て来るものでも何でもいいわけではなくて、根本の何かをまず考えて、それがロシアだったり、文字のデザインとか、またはドイツのダンスミュージックとかなんか自分の好きなものを入れてって、それをこう混ぜていくことです。ひょっとしたら、パスタにボルシチのソースをかけたら美味しいかもなぁと考えたときに、全然違うものにこう混ぜて料理を出すみたいな、ひょっとしたら美味しいかもしれないからやってみること。それがifuturelistの自分の中のコンセプトとなった。別にロシアにまとめるのではなくて、例えば、ボルシチに唐辛子と納豆入れたら美味しいかもなぁというコンセプトがありました。
- ホラー映画を愛する理由について
ー 山岡さんは子供の頃からホラー映画が好きで、特にジョージ・ロメロやダリオ・アルジェントの映画を好んでいますね。山岡さん個人のモンスター愛と、はるか昔からの日本の幽霊や妖怪への大きな関心には関係がありますか?このジャンルに夢中になる理由はなんでしょうか?
ホラーって、怖いことはそんなに文化とか言語が変わってもそんなに感情が変わらないと思います。例えば、お笑いでしたら凄く文化によって違ったりしますよね。日本人に面白いものは外国人には逆に面白く無いし、ひょっとするとすごく嫌な感じだったりすると思います。怖いものはそんなに変わらないと思います。そういう意味でジョージ・ロメロがやっている作品は外国人と同じように受け入られるので、それでホラーは共通の言語みたいになっていると思います。自分でもただ面白いなぁと思います。
— ロシアで伝説的に有名な物語からのキャラクターはご存知ですか?バーバ・ヤーガ、それとも不死身のコシチェイとか?一般的にホラーが好きですので、もしかしたら、このキャラクターも興味を持たれるかと思いました。
とても興味深いですねーおもしろい!
- 最近のゲームについて
ー 現在、ゲーム音楽はどう発展していると思いますか?一般的なレベルは上がっていますか?日本人のゲーム音楽家は外国人の音楽家に技術的に遅れているとおっしゃっていましたが、何か変わりましたか?今プレイしているゲームの中、最も注目すべきゲームは何ですか?
特別、レベルが上がったり下がったりはしていないと思います。 日本人の音楽家はOLD SCHOOLのスタイルに執着しすぎていて、いまの音楽にはマッチしていません。 いまプレイしているゲームの中では「God Of War」です。素晴らしいです!
- 多様なジャンルの音楽への愛の源について
ー 山岡さんのインスピレーション音楽家のリストを見ますと(記事下部の「豆知識」コーナーを参照)ジャンルの多様さに本当に驚きます。様々な音楽家は自分で見つけて聞くようになったのですか、それともご両親が音楽に対しての愛を育んだのでしょうか?
私の家は料理人です。音楽とは全然関係のない家庭です。そうですね、音楽のジャンルの多様さは、とくに意識をしたことはないです。ただ、オリジナリティをもった音楽が好きだということです。
- 最新アルバムと現在のプロジェクトについて
ー 山岡さんが最後に参加したアルバムは«Yuigon Zakura» (遺言桜)だと思いますが、艶も酣とのコラボについてご自身の印象などについて少し伺いたいです。非常にきれいで、エクスペリメンタルで山岡さんの有名な怖いモチーブが完全に新しく発展されたと思います。
あまり日本人と仕事をしたことがなかったので、たまには日本の人と音楽を作ってみようと思いました。たまたま、出会ったボーカリストのゆきという女性の歌声がとても興味深かったので、一度音楽をつくってみようと考えました。 このサウンドトラックは、ゲームの音楽や映画の音楽とも違いますが、ひとつのストーリーのようなサウンドトラックに完成したと思います。 また、作ってみたいですね。
ー 今は、どんな制作に従事していますか?
今は、いくつかのビデオゲームのサウンドトラックとテレビドラマ、映画の制作を行なっています。
インタビューの数日後、我々はモスクワで開かれた山岡さんのコンサートを訪れた。家から会場にたどり着くのはそう簡単ではなかった。まさにこの日、モスクワを大嵐が襲い、ニュースでは次々と上から2番目の危険度警報「オレンジレベル」が発表されていた。ボーカルのマクグリンさんがコンサートで冗談を言ったように、これは明らかに、町をサイレントヒルが覆ったために起こったことだ。
クラブの開場時間からコンサート開始時間まではまだ十分な時間があった。だが、訪れた人が退屈することはなかった。サイレントヒルの登場キャラクターたちが会場で文字通り具現化し、ファンに恐怖と本当の感動を同時に味あわせていたからだ。
サンクトペテルブルクのイベントで撮影された動画は、コンサートの前とコンサート中の雰囲気をよく伝えている。
- 豆知識:
① 山岡さんは、サイレントヒルの最も有名な曲「Theme Of Laura」が日本の演歌にインスピレーションを受けたものだと明かした。
Theme Of Lauraは、どちらかというと日本の演歌が元になっています。 こういった日本の民謡が、私の中にはあって、影響は受けています。
具体的には次の作曲に言及した:J・A・シーザー (J.A. Seazer)の「こどもぼさつ」と香西かおりの「無言坂」。
② 山岡さんは昨年すでにスプートニクを訪れていた。ただし訪れたのは日本語課ではなく、ベラルーシのゲーム「World of Tanks」へ関与した関係で、ベラルーシ課だった。
③ 山岡さんは驚くべきことに、音楽理論を知らない。だが作曲時やコラボ時に困ることはないと明言した。
特別に困ることはないです。人間が息の仕方を考えずにできているように、音楽をつくるのにやり方をしらなくても大丈夫です。
④ 夢のコラボの一つはナイン・インチ・ネイルズのトレント・レズナー。初期のインタビューで山岡さんは、音楽の面で考え方が似ていると何度も言及していた。
ロックバンドにいるときの彼のスタイルと、彼個人のときの異なるスタイルの創作がとても興味があります。
⑤ 山岡さんからのいくつかのおすすめのアルバムのリスト。英語で公開された初期のインタビューから:
ヴィサージ「ヴィサージ」;The Creatures「Anima Animus」;カーディガンズ「グラン・トゥーリスモ」;大村 憲司「春がいっぱい」;PJ Harvey「Is This Desire?」;デペッシュ・モード「Ultra」;Morte Macabre「Symphonic Holocaust」; ヴァンゲリス「Themes」; Moebius-plank-neumeier 「Zero-set」; ウルトラヴォックス「Vienna」; ヤズー「Upstairs at Eric's」; アート・オブ・ノイズ「The Seduction of Claude Debussy」;アン・ダドリー「Ancient and Modern」; ザ・カルト「Sonic Temple」; クレイグ・アームストロング「The Space Between Us」; Drain「Horror Wrestling」; ドリーム・シアター「Images and Words」; DAF「DAF」; ハードフロア「Homerun」; Damn the Machine「Damn the Machine」; ジョージ・ウィンストン「Autumn」; ジェイソン・ベッカー「Perpetual Burn」; コーン「Issues」;キリング・ジョーク「Brighter Than a Thousand Suns」; メタリカ「…And Justice For All」; Last Laugh「Meet Us Where We are Today」。
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