スプートニク日本
メドベージェワが長年師事してきたトゥトベリーゼ監督のもとを離れるという噂は、平昌五輪後、一度流れていた。その時はメドベージェワは必死になって否定したが、5日、メドベージェワが所属するスポーツ教育センター「サンボ70」のレナート・ライシェフ所長がスプートニクに対し、メドベージェワが今度は本当にトゥトベリーゼ監督から離れることを決意したと明らかにした。ライシェフ所長は公式的な発表は7日、ロシア・フィギュア連盟から出されるはずだと語っていた。
トゥトベリッゼ監督は数日間の沈黙を守っていた。ところが7日、ロシアTV第1放送に突然、トゥトベリーゼ監督の短い談話が発表された。4月半ば、噂を確認しようとする電話にもショートメールにもメドベージェワからの返答はなく、5日の報道を見て、自分はとうとうこれは噂ではなく、メドベージェワが自分の元を去ったことがわかったという内容だった。
今回のメドベージェワの決意についてはフィギュア界のプロから様々な見解が出されているが、大方はこうした結果をありうるものと見ていたことがわかる。
カルガリー五輪金メダリストのナタリア・ベステミアノワ氏は、メドベージェワにとっては、平昌五輪で自分ではなくアリーナ・ザギトワ選手が金メダルをとったのが決定的瞬間となったのではないかと推測している。
「ジェーニャの決めたことはどんな場合にせよ、尊重しないといけません。それは彼女がビックな選手であり、何が起きているかを分かっているからです。五輪でのメドベージェワの演技は理想的だった。にもかかわらず彼女が受賞したのは金ではなく銀だった。」
2002年ソルトレイクシティ五輪の金メダリスト、アレクセイ・ヤグディン氏は、最高峰のメダルを目指して戦う2人の強豪選手が1人の監督のもとにいるという状況がどういうものか、まざまざと経験してきた。
「これは前にも言いました。一人の監督のもとに勝利を狙う人間が2人よりそうということは、その監督がすべてを正しく行おうとどんなに努力したところで、あり得ないのです。僕はこれをエフゲニー・プルシェンコとアレクセイ・ミーシン監督との間にあった状況から言っているのですが、練習は一緒に行うことはできる。でもどんな場合でもどちらかが心理的に踏みつぶされてしまう。僕は18歳の若さで理解しましたよ。ああ、僕にはこれ(監督の元を去る決意)が必要なんだ。残り続ければ袋小路になるとね。おそらくメドベージェワもこれと全く同じことを感じたのではないでしょうか。」ヤグディン氏はこう語っている。
ソルトレイクシティ五輪アイスダンス銀メダリストのイリヤ・アベルブフ氏は、長年の協力を経て、トゥトベリーゼ監督の元を去る決意をしたメドベージェワの心中を思いやり、どんな理由であってもこれを支援すべきだと語っている。
「この状況で私はジェーニャとエテリ(トゥトベリーゼ監督)の両方を思って心配しています。彼女たちは互いのために多くのことをしてきた。今私たちが知っているジェーニャを作り上げたのはエテリです。このタンデムは長年心を寄せ合ってきた。だからジェーニャの心には絶対に監督に対する感謝の気持ちしかないはずです。」
「ジェーニャは私たちの国の真の愛国者です。こんな噂は根拠がありません。」
また羽生選手を育て上げたカナダ人コーチのブライアン・オーサー監督のもとに移るのではないかという噂は、実はこの間、流れていた。これについては、専門家の多くはオーサー氏の活動には肯定的な見解を示しているものの、絶対にオーサー氏がメドベージェワの新監督になると断言するのは時期尚早とのいう反応だ。
アヴェルブフ氏 「オーサー氏は非常にパワフルなスペシャリストで世界のリーダーに数えられる存在。だから有能な選手は彼につこうとします。ただしオーサー氏の流派はロシアのものとは異なるので、ジェーニャは新たな条件に慣れるのは大変だろうと思います。」
ベステミアノワ氏 「外国人スペシャリストが存在するスポーツ種目はたくさんあります。フィギュアも例外である必要はありません。オーサー氏はビックな監督ですから、彼女が出せる最高の結果を引き出しうるでしょう。唯一の問題は資金繰りかもしれませんが。」
メドベージェワ選手はトゥトゥベリッゼ監督の元で10年間トレーニングを積み、大きく成長してきた。2016年の10月のスプートニクの取材にメドベージェワ選手は、監督とは自分の人生の半分以上を一緒に歩んできており、家族よりも長い時間を過ごし、第2の家族と自信をもって言える関係を築いてきたと語っていた。
トゥトゥベリッゼ監督も1日にスプートニクで行われた記者会見で、メドベージェワ選手は「今もなお無敵の存在でありつづけている」と断言した。トゥトゥベリッゼ監督は普段から余計な発言を行わないことで知られている。横に平昌五輪の金メダリスト、ザギトワを配した上で漏れた監督のこの発言は、メドベージェワ選手への思いと評価を的確に表すものとして注目を浴びていた。