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中国経済に詳しいニッセイ基礎研究所の三尾 幸吉郎(みお・こうきちろう)上席研究員は、ようやく明るい見通しが感じられたと話す。
三尾氏「昨年の春ごろから、安倍首相は中国に対して前向きな姿勢を見せ、中国側もそれに応える形で、雪解けムードができていました。今回、雪解けから協力関係へと移行するための、一歩前進ができたと思います。中国が推進する『一帯一路』については、安倍首相の訪中に合わせて第一回目の協議が行われる予定です。今まで言葉の上では協力する、と言っていましたが、具体的な動きはありませんでした。
中国は今年4月、鉄鋼製品等に高額の輸入関税を課した米国への対抗措置として、米国からの主要な輸入品に報復関税をかけた。さらに日韓に対し、サミット前から「米国の保護主義に対抗しよう」という強いメッセージを送り続けてきた。日中韓はサミットにおいて東アジア地域包括的経済連携(RCEP)や日中韓FTAの交渉を加速することで一致したが、日中の間には温度差が感じられる。山西財経大学の李凱(リー・カイ)准教授は、日中韓の自由貿易は中国よりも日本や韓国にメリットがあると強調する。
李氏「日中韓の自由貿易が実現すれば、EUやNAFTAに対抗できる、非常に魅力的なものになります。15億人の人口を抱える3国には、人もいれば、お金もあるのです。中国の優越点とは、市場の大規模性であり、中国の役割と責任は明らかです。日本の経済成長は何年も停滞したままですし、近年の韓国の財閥系企業の状況も芳しくありません。しかし中国は日本と韓国を活性化させ、両国が困難な経済状態から抜け出すのを助けることができます。日韓は、ハイペースで成長を続けている中国よりも、3国の自由貿易によって多くの恩恵を受けるでしょう。すでに韓国は、中国との自由貿易のおかげで、台湾を上回る経済成長をしています。」
三尾氏「日本と中国では、求めている自由貿易の度合いが違います。中国は、1人あたりGDPが9000ドル程度と、日本の約5分の1で、WTOの枠組みの中では発展途上国として優遇を受けている立場です。日本はより高いレベルの自由化を求めており、知的財産権の保護などの領域に重点を置いています。関税の領域で優遇を受けている中国とは、立場が異なります。
日中は、米国が保護主義をとり二国間交渉を重視している現段階では共同歩調をとれますが、トランプ氏が大統領でなくなり、米国の新しいリーダーが方針転換したとき、日中間には溝ができるかもしれません。知的財産権の問題で日米は共同歩調をとるでしょう。米国は本来、自由化度合いのレベルが高く、自由化の体制も整っている国です。いずれにしても日本は、米国、中国といった両大国のわがままにふりまわされずに、毅然として対応していくべきです。」