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- 日露経済、眠るポテンシャル
ガルージン大使は、今年5月に行なわれたサンクトペテルブルク経済フォーラムにおける安倍首相のスピーチが心に残っているという。このスピーチで安倍首相は、ヤマルLNGプロジェクトを始め、ロシアからの天然ガス調達のメリットを列挙し、日露のウィン・ウィンを強調した。日露両首脳はフォーラムの枠内で行われた日露ビジネス対話にも参加し、大いに盛り上がった。
- 平和条約締結は日露関係発展の前提条件ではない
ガルージン大使は、ロシアの言い回し「荷馬車を馬の前に置いてはいけない」を例に挙げ、平和条約締結→日露関係発展、という順序に固執するのはナンセンスであり、まずは日露関係全体を発展させることによって新しい相互協力の機運、理解、信頼を高めていくことが重要との見解を示した。
ロシア側は日本人が南クリルに対して抱いている感情を最大限尊重しています。そのことは、ビザなし訪問や墓参の実施などによって示されています。と同時に、同意していただきたいのは、ロシア国民が、南クリルに抱いている感情も考慮されるべきだということです。南クリルが第二次世界大戦の結果、合法的にソ連のものになったということは、国連憲章によっても確定されています。我々の国が2700万人もの犠牲者を出して、ナチスドイツとその衛星国に勝利するにあたり最も重要な貢献をしたことは、覚えておくべきことです。あの恐怖の戦争の記憶は、社会や人の心の中で、今に至るまで生きています。南クリルがロシアに引き渡されたことは、戦争の結果のうちの一つです。私たちは、日本社会において、ロシア国民が抱いている感情への理解が深まることを期待しています。」
- ロシアの伝統と文化を広める
ロシア大使館は日本に住むロシア国民や日本人のために、文化行事を提供している。今年2月、春の訪れを祝うイベント「マースレニッツァ」が初めて開催され大盛況だったほか、5月には、反戦運動「不滅の連隊」が行なわれた。
大使「不滅の連隊には、約300人が参加し、命をかけて祖国を守ってくれた人々の記憶に敬意を捧げました。歌手のニキータ山下さんも参加してくれましたし、ソ連の軍服に身を固めた日本人のアーティストの皆さんは戦時中の歌を歌ってくれ、とても感動的で、私たちの心をひとつにしてくれました。こういった催しを今後も定期的に開催していきたいと思います。」
- メディアに歪められるロシアのイメージ
内閣府が実施している「外交に関する世論調査」によれば、昨年10月の段階でロシアに対して「親しみを感じない」とする回答者の割合が78.1%にものぼっている。一方、同調査でアメリカに親しみを感じる回答者は78.4%だった。なぜこのような数字になってしまうのか、日本におけるロシアのマイナスイメージを払拭するにはどうすればよいか、ガルージン大使の見解を聞いてみた。
7月14日の読売新聞の社説を例に挙げてみましょう。社説「NATO会議 憂うべきトランプ氏の同盟観」は、 「北大西洋条約機構(NATO)はソ連・ロシアの脅威に対抗し、欧州の平和を支えてきた。」という一文で始まっています。ワルシャワ条約機構(注:NATOに対抗するため1955年にソ連を中心に作られた軍事同盟)が正式に解散し、ソ連が崩壊した今、何をもってして、ロシアがNATOにとっての脅威だと言えるのでしょうか。NATOは解散していません。逆にNATOこそが、東方に新しい加盟国を拡大し、軍事インフラを拡大し、ロシア国境ぎりぎりまで迫っています。
NATOは90年代、ソ連・ロシアに対し、東方に拡大しないと約束しましたが、彼らは約束に反した行動をとっています。日本の最大手新聞は、こういった状況を完全にひっくり返して解釈し、脅威はロシアから生じていると主張しています。
力による現状変更を始めたのはロシアではなく、1998年、NATOによってです。ユーゴスラビアが空爆され、住民投票もなしに、コソボの独立が一方的に宣言されました。これこそが力による現状変更です。読売新聞はこのことを知らないのか、あるいは忘れているのでしょうか。戦後ずっと、こういった情報を目にしていれば、ロシアに対する客観的ではない見方が蓄積されていくのは当然です。
今回のサッカーW杯は、ロシアが本当はどんな国なのか、オープンかつ好意的で、安定し、安全な国であるということを世界に証明する機会となりました。この大会が日本のサポーターにとっても、ロシアをより知る助けになったとしたら、嬉しいことです。」