特務部隊と『江南スタイル』 韓国がいかに「国軍の日」70周年を迎えたか

© Sputnik / Ramil Sitdikov / メディアバンクへ移行歌手PSY(サイ)さん(アーカイブ写真)
歌手PSY(サイ)さん(アーカイブ写真) - Sputnik 日本
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ミサイルの代わりにポップ歌手を登場させ、韓国が「国軍の日」を祝ったことはかつてなかった。南北朝鮮関係の緊張緩和を背景に韓国は最大規模の軍事パレードの実施を止めただけでなく、この行事のコンセプト自体を根底から変更し、軍事力の誇示から祝祭的コンサートへと様変わりさせた。韓国が「国軍の日」の祝日への姿勢をどのように変えたかについて、スプートニクの特派員が現地レポートをお届けする。

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形式上は現在の韓国軍の編制の歴史は1948年にさかのぼる。この年、朝鮮半島の南部に別の国家が樹立した。ところが10月1日が「国軍の日」と定められたのはそれよりずっと後の1956年。この日が、朝鮮戦争の最中の1950年に韓国陸軍が初めて38度線を越え北進した記念の日であったことがその理由だった。

1961年、軍事クーデターで朴 正煕(パク・チョンヒ)大統領が政権に立つと、韓国の「国軍の日」は特別な意義を帯びるようになった。1970年代からは ソウル特別市を流れる漢江の中州にある汝矣島(ヨイド)の元空港に100万人以上を集め、最新の軍事機器を見せつけ、パラシュート降下を披露する軍隊行進が行われた。

しばらくすると「国軍の日」の巨大イベント会場は、空軍基地と政府の主要空港の機能を一つに集めたソウル城南(ソンナム)空軍基地の空港へと場所を移した。

一方、汝矣島の方は島の面積いっぱいに巨大なパークが作られた。軍事パレードの当時を唯一思い起こさせるものは演説台の下に掘られた防空壕で、今やこれはアート空間と化している。

© Sputnik / Andrey Olfert / アート空間アート空間
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2017年、文在寅(ムン・ジェイン)氏が政権につくと「国軍の日」の組織に修正を入れる意向を示し、史上初めて平沢(ピョンテク)にある在韓米軍の軍港と、もう1か所、近年、南北間で最大の軍事衝突が起きた場所で実施された。選ばれた延坪島は1999年と2002年に南北間で激しい砲撃事件が起きた海域だ。また2010年に北朝鮮による韓国哨戒艦「天安」襲撃事件の起きた場所にも大統領は立ち寄っている。

軍事パレードでは、米国のミサイル複合体ATACMS やパトリオットミサイル、独巡航ミサイル「タルウス」、射程距離800キロの韓国の最新弾道ミサイル玄武‐2C、同じく韓国の開発で射程距離1500キロの巡航ミサイル玄武‐3Cが披露された。

ところが今年の「国軍の日」は長年の慣習を破って、屋内の軍事施設ではなく、ソウル中心部の平和広場にある戦争記念館で実施されたのだ。

式典の実施時刻も今回初めて夜になり、重ねて初めて主要なテレビ局によって生中継が行われ、その準備に参加した兵士数も最低限に抑えられた。

もちろん公式的な儀礼部分もあった。列を入れ替え、軍旗、ライフル銃を使ったトリックや恒例の戦闘機の飛行も行われた。

大画面には米軍の無人偵察機「グローバルホーク」、ステルス戦闘機F-35A、無人潜水機器、最新鋭の潜水艦が映し出された。これらは近々にも韓国軍の軍備に入る。次にステージは「未来の戦闘システム」に切り替わり、先進戦闘装備「「ウォリアー・プラットフォーム」を着た兵士らが特殊バギーの乗って上がってきたかと思うと、無人戦闘ロボット、小型ドローン、対戦車ミサイル搭載の装甲車両が目白押しに押し寄せた。また米軍の特務部隊もロープを伝ってヘリコプターからパラシュート降下する様子を披露している。

それでもイベント自体は正真正銘のショーに仕立てられていた。コンピューターゲームの様式で構成された3Dと音楽。韓国古来の勝利の踊りはブレイクダンスの要素を取り入れ、迫力満点のテコンドーは板割りの効果を上げるため、燃え立たせるようなリズムに乗せて、ヒップホップの動きを加えた。加えて最新の戦闘装備をデモンストレーションする兵士の中には、あのアイドル歌手グループ「2PM」のメンバーで米国のグリーンカードを取得しながらも、祖国での兵役に就くためにこれを放棄し、あまたの手術を受けてまで、入隊を果たしたテギョンさんの姿もあった。

クライマックスは歌手PSY(サイ)さんの出演だった。PSYさんは装甲車両からいきなり登場したかと思うと、2002年のサッカー・ワールドカップ開催時に人気を博した持ち歌の『チャンピオン』を披露し、一世を風靡した『江南スタイル』を熱唱した。

このPSYさんだが、実は軍に関しては特筆に値する履歴の持ち主だ。一時は兵役を逃れたPSYさんだったが、2007年、兵役に代わる産業機能要員としての勤務が定期的にコンサート活動を行っていたことを理由に問題視され、再入隊を余儀なくされてしまった。PSYさんはなんとか兵役を逃れるために最高裁で争うところまで悪戦苦闘したものの、最後は決定を受け入れ、兵役を終了している。こうした葛藤を経たPSYさんは軍部に特別な敬意を集めるようになり、こうして定期的にノーギャラで軍人を前に歌を歌うようになった。

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