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ロシア外務省は先に、上月豊久駐ロシア大使を呼び出した。日本政府指導部によるロシアとの平和条約締結問題に関する発言に抗議した形だ。ロシア政府は同問題をめぐる情報ノイズを「自国の問題解決シナリオを他方に強いる試み」だと認識している。だが交渉というものは何より対話とお互いの妥協だ。スプートニクはロシアの諸専門家に、南クリル諸島が全4島ないし一部返還された場合の露日交渉の結末はどうなると考えるか、話を伺った。
「今日の時点で、日本に返還された諸島に後々、対艦ミサイルを有する日本もしくは米軍基地が設置されないとロシアに保証できるものは誰もいない。つまり、ロシア艦隊が彼らに照準を合わせられる可能性もある。南クリル諸島に軍事基地があれば、米国はロシア極東全域だけでなく、中国をもコントロールする可能性を得る。北大西洋条約機構(NATO)はすでに、NATOの東方拡大はないと約束したこともあるが、後になって忘れることを選んだ。そしてこの歴史は繰り返されかねない。NATOは南クリル地域に軍事的優位性を獲得し、ロシアは言ってみれば、ウラジオストクに拠点を置く太平洋艦隊を『スクラップ送りにする』リスクを負うわけだ。だが1年を通して凍らない太平洋艦隊にとっての太平洋への出口は、日本が返還を求める諸島地域だけにしかない」
引渡しはまた、他国からの領有権の主張を活発化させる危険な前例も作り出す。こうした見解を示したのは、軍事専門家でありロシア科学アカデミー極東研究所日本研究センターのワレリー・キスタノフ所長だ。
「これは他国からの領有権の主張も活発化させる。フィンランドは1939〜1940年の冬戦争の結果、ソ連そして現ロシアが領有権を獲得したカレリア地峡について問題を提起するかもしれない。ドイツは元ケーニヒスベルク(現ロシア領のカリーニングラード)の返還問題を生き返らせる可能性がある。とはいえ、日本のように敗戦国のドイツは降伏に関する法的文書に署名し、戦争の結果を認めた。スペインはまた、英国にジブラルタルを返すよう要求できる。例は少なくない」
だが、領土喪失はロシアにとって大きな経済的利益をもたらすのではないか?こうした見通しにクルトフ氏は懐疑的な目を向ける。