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経済学者でサンクトペテルブルク大学・米国研究講座の准教授を務めているグリゴーリー・ヤルイギン氏は、楽観的な判断を下すには重みのある根拠がまだないと考えている。ヤルイギン氏がスプートニクとのインタビューで示した見解によると、今回の報道向け発表は今のところ、交渉継続のための一時休戦が双方にとって必要だということを示す証拠に過ぎないという。「貿易を巡る目下の対立において米中双方が成果を得ようとする条件に関して、速記録の中に具体的なことは全く書かれていない。例えば、中国が譲歩を決めた場合、既に拡大された米国による関税規制のもとから、どのような品目が除外されるのか、というようなことだ。これまでトランプ大統領が関税率を引き上げ続けていることから、トランプ大統領には中国政府に対して敗北する用意は全くないことが分かる。これが、我々がほぼ確実に知っている唯一のことだ。残りの全てについては、霧が一面に広がっている」。
それにもかかわらず、ヤルイギン氏は、中国政府の代表者らがトランプ大統領と行った今回の会談には一定の筋立てが存在するとして注意を促している。「中国政府が米政府に対して譲歩に踏み切ると決定したのなら、なぜ他ならぬ今なのかが私には全く理解できない。中国の今日の指導者である習近平国家主席は、自らを強力な国家の強い政治家として位置づけている。一方で、トランプ大統領が要求しているような米国との新たな合意は、習主席の評判に対して一定の打撃となる。この(米中による)衝突において自らを敗者と突然認めることに中国の指導部が同意するような論理は、私には見出せない。というのも、既に最近、中国政府が自らは貿易戦争を欲しないが恐れもしないと表明しているからだ。また実際、自国経済の成長速度が低下しているにもかかわらず、中国政府は打撃に対して上手に耐えている。さらに、中国政府のポケットの中には、切り札がまだ少なからずあるのだ」。
米国と中国による貿易戦争で争われている実際の対象が既に、関税を巡る事柄を著しく上回るものになっているのは確かだ。目下の対立におけるトランプ大統領の最終目標、それは中国が米国にとって強力な競争相手ではなく、米企業にとっての1つの巨大な組み立て工場だった時代に回帰することなのだ。