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ジェトロ海外調査部・ロシアCIS担当の梅津哲也氏は、「ロシア市場でのビジネスは厳しいというイメージがあるが、必ずしもそうとは言えない。この調査が、認識のギャップを埋めるひとつの材料になれば」と話す。
日系企業がロシアに対して感じる投資環境面でのメリットは、ポテンシャルの大きさだ。「市場規模と成長性」を評価する企業は78.1パーセントと、2013年の調査開始以降、6年連続でトップとなった。
安全面でのリスクとしては「治安・テロ」がトップとなってはいるものの、前回調査の79.3パーセントから今回調査の53.5パーセントへと、大きく数字を下げた。安全面でのリスクはないと答えた企業も21.9パーセントに達するなど、駐在員の生活環境という面では、それなりに安定していると言える。
いっぽう、課題も多い。投資環境面でのリスクとして最多だったのは「不安定な為替」で69.3パーセントだった。雇用・労働面では、従業員の質と賃金上昇に悩む企業が多く、人材採用が容易ではないことを示している。
西側諸国からの経済制裁に対し、ロシア政府が推奨している対抗策「輸入代替」について、なんらかの影響が「ある」と回答した企業は44.7パーセントとなった。梅津氏は「今まではロシアにおける日系企業の競合といえば欧州企業や同じ日系企業だったが、輸入代替により、地場企業がライバルとして台頭してきている」と分析する。
調査では「政府方針と実務レベルの齟齬」「国内輸送環境が劣悪」「付加価値税増税の悪影響が不安」といった、自由記述による企業の生の声も紹介されている。
今後の事業展開については、今後1~2年で「拡大」と回答した企業は53.5パーセント(前年比7.4ポイント減)で、「現状維持」は45.6パーセント(8.6ポイント増)となった。「縮小」はわずか0.9パーセント。ロシアにとどまり、長い目で慎重に好機をうかがう姿勢が見て取れる。
詳しい調査結果はジェトロのホームページから閲覧できる。