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一方、日本の河野外相はこれよりも少し前、米国の地上配備型ミサイル防衛(MD)システム「イージス・アショア」の日本国内への配備について、INF全廃条約に対する違反であるとみなすことを拒否した。この問題について、露日両政府がそれぞれどのような論拠を示しているのか、スプートニクはCIS(独立国家共同体)諸国研究所の副所長を務める軍事専門家のウラジーミル・エフセーエフ氏に話を聞いた。
エフセーエフ氏は、「岩屋毅氏による発言は、本州に配備される戦略的軍事施設のイージス・アショアが、弾道ミサイルの迎撃のみを目的としているということを意味する。つまり、この施設が専ら防衛用のものであり、攻撃用の軍事施設ではないということだ」と説明するものの、「しかし、ロシア側の専門家らは、米国がイージス・アショアの防衛用機能を攻撃用機能に容易に改造できると確信している。そして、そのような改造の目的は他でもなく、予防的な、いわゆる武装解除的攻撃として中距離ミサイルをロシアに向けて使用することなのだ」とも述べている。
以前は、他ならぬ大陸間弾道ミサイル(ICBM)こそが、敵国の領土を狙って地球上のどの地点に対しても弾頭を到達させることができる絶対的な兵器であると考えられていた。しかし、短・中距離ミサイルは現在、はるかに大きな度合いで世界を威嚇している。問題は、ICBMが発射されてから目標に到達するまで数十分かかるのに対し、短・中距離ミサイルの最大の長所が、数分間という非常に短い時間で目標にまで到達できることにあるということだ。
エフセーエフ氏は、まさにこの事実がロシアにとって、その国土が日本に近い位置にあることを考慮に入れた場合、深刻な脅威になっているのだと指摘し、以下のように述べている。「中距離ミサイルは、ロシアが報復攻撃を行うよりも早く、我々の国の戦略核戦力の制御手段を壊滅させることができる。このことがロシア政府の懸念を呼び起こしており、この懸念を解消できる方法は、当該施設の定期的査察だけだ。そのような査察は、イージス・アショアの施設には巡航ミサイル向けにそれを改造できる可能性が存在しないことを示すのが目的だ。だが米側は、欧州とアジアにおけるMD施設の査察に関するロシア政府の提案を全て拒否している」。
このように考えれば、日本国内に配備される迎撃ミサイルが米国自身によって運用される場合、イージス・アショアの施設にはINF全廃条約に対する違反がやはり存在するということになる。というのも、米政府は2月2日に、同条約への自国の参加を一方的に停止することを宣言したに過ぎないからだ。米国による同条約からの離脱プロセスは、ロシアが犯しているとして米側が非難する違反をロシアが取り除かない場合、半年後になってようやく完了する。
一方、米政府は依然として、イージス・アショアの施設について、「非友好的な国々」の領土から発射されるミサイルを破壊することを目的としていると主張し続けている。形式的には、そのような国々であると米国が長年にわたって名指ししてきたのは、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)とイランだ。だが事実上、米国のMDが出現しつつあるのは、ロシアの国境沿いなのである。
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