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「Shell and Joint」を映画祭に推薦した張本人で、ロシア映画研究家・批評家連盟の会長でもあるキリル・ラズロゴフ氏は言う。
「選考のため、日本では約2日間で80本の映画を見た。実は最初の15分か20分くらい見たところで、次の映画に移らないといけなかったが、最後に残った時間で『Shell and Joint』を最後まで見せてほしいと頼んだ。そこで、自分の選択眼は間違っていなかったと確信した。この映画は非常にオリジナリティにあふれ、受けとめるのが難しいと言えるもので、ビジュアルの理解力よりもインテレクトが要求され、どことなくジャン=リュック・ゴダールを彷彿とさせる観客との知性ゲームだ。それでも実に、忘れがたい印象を残してくれた。この映画祭で一番好きな映画のうちの一本だ。」
モスクワ国際映画祭での『Shell and Joint』のワールドプレミア終わりました。「生と死と性を哲学的」に描いたはずなんですが、ほぼほぼ爆笑でした。おい! pic.twitter.com/5MqLMuTt3U
— 平林勇 (@hirabber) 22 апреля 2019 г.
映画評論家のデニス・ヴィレンキン氏は「全ての意味で、一番ラディカルな映画」だと言う。
「男女2人ずつの生物学者が出てきて、それぞれの会話が非常に面白い。2時間半にも及ぶ実験的な構造、性的嗜好に関するユーモア、排泄、風変わりなセッティング、それらが全部一緒になっている。全ての意味で、映画祭に出た中で一番ラディカルな映画だ。でもそれが魅力でもある。この映画は見る側に対して、頭の中に、映画全体を通り抜ける鉄道をひくような作業を要求する。」
映画情報のポータルサイト「オービデオ」は「モノレールに乗って、様々なシーンをちょっとずつ見せてもらっているような感覚だ。それぞれのエピソードは作品中にちりばめられており、どれも見るものに同じくらい作用する。それだから、それらのエピソードを総合するグローバルなストーリーを見つけることはできなかった。変わったメロディや音をバックに展開されるそれぞれの会話シーンは、特に筋書きのない日常風景の切り取りで、それらは全て、ある種、我々の世界の近似性に形成されていくのだろう」と批評している。
モスクワ映画祭での上映がワールドプレミアだったため、観客の反応が気になっていたという平林監督は「自分が想像もしていなかったところで笑いが起きました。今回の最大の収穫は、細かいセリフや絶妙な間でも海外の人は笑うんだと思ったことです」と、モスクワ訪問をふりかえっている。面白いか、ぶっ飛んでいるか、難解か…「Shell and Joint」日本公開のあかつきには、ぜひ判断してみてほしい。
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