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中国が公表した貿易戦争白書には、中国はアメリカとの対立を望まないが、それと同時に、貿易戦争を恐れはせず、必要な場合には、最後まで戦う用意があると記されている。白書にはまた、貿易対立が長期化した場合でも、中国は自国経済の健全性を確保するのに十分な資源を有しているとも記されている。北京は当然、貿易戦争が疲弊を招き、中国経済に大きな損失を与えることを認めている。しかし同時に、世界のトップ2の経済大国の戦いに「速戦即決」はなく、アメリカもまた甚大な損失を被ることになる。
中国はレアメタルの輸出禁止に加え、アメリカ国債の売却を開始することもできる。中国はアメリカ国債を大量に保有しており、総額は1兆ドルを超える。中国はアメリカ国債の最大の保有国なのである。これらの国債が一気に売却されれば、価格は暴落し、それにともなって金利は上がる。つまり、アメリカ経済にとっては融資を受けるための費用が高騰し、アメリカ経済は既存の融資モデルに基づいた成長を維持できなくなるのである。
しかし、アメリカに影響を及ぼすもっと簡単な方法がある。フォーブスが指摘しているように、中国は国内市場でiPhone、アメリカの自動車や航空機の販売を禁止することができるのだ。中国は大多数のアメリカ大企業にとって最大の市場である。アメリカの投資企業Cowenの試算によると、中国市場でのiPhoneの販売禁止はアップルの収益を26%押し下げる。ボーイングは民間航空機の売上の25%を中国から得ている。フォーブスが書いているとおり、ゼネラルモーターズの自動車が中国の税関で「止まって」しまった場合、同社がどうなるのかを考えると恐ろしい。
現在も、中国が公式にアメリカ企業を自国市場から締め出すことはあまり考えられない。対外経済貿易大学中国WTO研究院院長の屠新泉氏はスプートニクのインタビューで、中国は市場の原則に従って活動しており、企業の法的利益を守っていると語る。
「中国が自国市場からの締め出しを行ったり、アメリカの製品やサービスを拒否したりするとは思いません。中国はこれまでに何度も、中国に進出している外国企業の投資と法的利益を保護すると強調しています。私たちは信頼できない外国企業のブラックリストを作成しましたが、この措置はあくまでアメリカとの貿易戦争における一定のプロセスに対するものであり、市場ルールと契約に違反し、部品の供給をブロックし、中国企業の法的利益を害している一部企業に対するものです。現在、FedExがこのリストに掲載される可能性がありますが、それは同社が中国で活動を禁止されるということを意味するのではなく、おそらく、何らかの違反金を課されるだけということになるでしょう。中国に投資し、自らも貿易戦争で苦しんでいるテスラやアップルのような企業に対しては、製品供給が完全禁止される可能性はおそらくないでしょう。ただ「白書」は、貿易戦争における中国の姿勢を説明し、中国を擁護しなければなりません。というのも、アメリカは、交渉決裂は中国のせいだと非難しているからです。白書には、むしろアメリカ自身が何度も交渉で姿勢を変えてきたことが明記されています。白書は、交渉決裂が中国のせいではないことを世界に示さなくてはなりません。それにもちろん、白書は一定の線引きを行い、中国がどのような状況であっても絶対に同意できない要求とは何なのかをはっきりさせ、履行できない要求をわざと突きつけた上で、交渉を決裂させたといって中国を批判すべきではないことを記しています。」
しかし、たとえアメリカ企業に対して正式な制裁が科されなかったとしても、評判失墜はビジネスにとって大きな痛手だ。すでに中国では多くの有名人がiPhoneの不買や、華為技術(ファーウェイ) のスマートフォンへの乗り換えを宣言している。中国の一般のSNSユーザーはこの動きを積極的に支持している。ネット上では、アメリカとの貿易戦争によってプライベート生活がうまくいくようになったファーウェイの従業員のストーリーが大きな人気を博している。この従業員の彼女は、今後は決して喧嘩を仕掛けたりせず、彼が自宅で快適に過ごせる環境を作ると約束したのだ。それも、ファーウェイの発展とアメリカへの勝利のために、彼が仕事に集中できるようにとの配慮なのだ。