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5月24日、ロシアを拠点とするQuantometricaと日本のEdgeOf Incは、両国の市場においてポートフォリオのスタートアップを共同で迅速化し、リロケーションすることをうたう、戦略パートナーシップ契約を締結した。小田島氏は日本のスタートアップ環境の特性を指摘する一方で、日本市場におけるスタートアップへの投資のほとんどが民間の企業ファンドの出資であること、日本の市場特性からみた場合、オートメーション、ロボット化、AI、高齢者向けサービス、ブレークスルーのテクノロジーに日本で成功する大きなチャンスがあると力説している。
ところが外国のスタートアップが日本市場に参入しようとする時に大きな問題となるのが、独特な日本文化や特異なビジネスマナーに不案内であることに並んで日本語の壁だ。だから必要な知識と日本市場にコンタクトを持つパートナーが日本にいることがとても重要となる。
「ひとつには、日本語しかしゃべれない人がほとんどなので外国を怖がっていることと、日本の市場がある程度大きいので、最初は日本で頑張ってから外に出ましょう、となかなか海外に出ようとしないんです。それからもうひとつの問題は、日本の人にとっては海外はイコール米国なので、日本の次にどこに行くかといったら米国しか念頭にない。
僕らの役割は米国以外に出る先はあって、それぞれにいいところがあるから、自分のプロダクトに合う国を選んで、そこに向けて作業を進めることを教えることです。ほとんどの国はそれを手伝ってくれるんですよ。フランスやオーストリアはスタートアップが行きたいといったら、ビザや助成金のサポートがあるんです。それを僕らは勉強して日本政府と一緒にプロモーションをするというのをやっています。
今回初めてロシアに来たんですが、スコルコヴォとかフリーとかを視察して、ロシアにはこういった仕組みがあるから、こういうことをしている企業ならロシアに行ったほうがいいよという話を徐々にしていきます。」
現在、ロシア市場には日本の大企業も中規模の企業も多数参入しており、うまく機能している。一方で大規模ではないスタートアップはずっと苦しい状況をかこっている。実際、日本の起業家らがロシア市場にやってきて、事業展開を開始したものの、法律の違い、市場環境の目まぐるしい変化、日本に比べて整備の遅れた投資環境に翻弄され、結局退散したという例はいくつかある。小田島氏の見解は少し異なり、一番の問題は他の多くの国にもあるランクの問題というよりは、ステレオタイプが先に立ち、ビジネスについても十分な情報がいきわたっていないことだと言う。
「僕はステレオタイプを非常に危険視しています。僕自身、日本とフランスが混じった家庭環境で育ち、日本のフランス人学校に通っていました。ここは日本で一番安いインターナショナルスクールで、イスラム教徒もユダヤ教徒も30国籍くらいのいろんな人が混じっていました。それぞれの国イメージはあっても結局は人なんです。だからステレオタイプって意味がないなという育ち方をしました。
ロシア人と実際話してみたら、『良い人じゃん』と思うはずですよ。どんどん話す相手を増やして10人と話をして皆いい人だったとわかれば、『ロシア人って良い人じゃん』に理解が変わるんです。」
ロシアのスタートアップにとっても日本市場は決して参入は容易くはない。現時点で日本市場にはロシアのスタートアップは皆無。理由はおそらく他と変わらず、日本語がわからない、企業に求められる要件がより厳しい、法律が違うといったことが深刻なハードルとなってしまう。
「ロシアに限らず、いろんな国からのスタートアップ展開をお手伝いする時は、まず自分の国でやってみてくださいといいます。自分の国でプロダクトの出ている国しか相手にしない。自分の国で成功していない人は外国に出てもだめですから。これをやっている人は自分の技術が何で、お客さんが何を求めているかがよくわかっています。
次に、そのニーズが日本にあるのかどうかということを確認します。どういったポテンシャルカスタムがいるか、どんな強豪がいるか、日本の法律を遵守するにはここをこう変えなければいけないといったことを僕らが無料で調べ、サポートします。
その上で、これだったらこの会社は日本に来る価値があるね、となったら、次のステップとして一緒にジョイントベンチャー作るのか、代理店契約にするのかという話が生じます。日本に来る価値の有無を調べるのはすごく重要で、日本は日本語しゃべれないと調査も何もできないでしょう。日本人も言葉ができないと相手にしてくれないので、『ああ、もう日本に行くのはやめよう』となっちゃうんです。でもそこを乗り越えて実際に入ってみると『日本、結構いいじゃないか』となるんですよ。これを試すためのサポートを我々はやっています。」