ブルナジャン記念連邦医学生物物理センターのナタリヤ・シャンダラ研究生物医学技術副部長によると、立入禁止区域の滞在規則を守れば、観光客を脅かすものは何もないという。放射線被ばくの観点で言えば、立入禁止区域の訪問は、レントゲン室よりも危険は少ないとのことだ。
規則その1:規定ルートから外れない
7月31日、ウクライナ・チェルノブイリ原発立入禁止区域管理局は、当該区域訪問のための水上ルートを開設したと発表した。
同ルートはプリピャチ川とウジ川を通り、管理局は、水上ルートは線量専門家により検査され、訪問者に安全であることが確認されたとしている。
ナタリヤ・シャンダラ副部長は、安全ルートから外れることは禁止だと注意を促した。ルートから外れれば、汚染区域に入る危険性があるからだ。安全ルートの滞在自体も、規定時間内と制限されている。
規則その2:アルコール禁止
アルコールが放射線被ばくに対する耐性を高めるという非科学的な意見も存在する。チェルノブイリ原発事故直後は、処理作業員に赤ドライワインが支給された。しかし酩酊状態による作業事故が多発したことから、後にアルコール摂取は禁止された。専門家は、飲酒はツアー客の安全リスクを高めるだけであり、ツアーにアルコールは持ち込むべきでないとしている。
ナタリヤ・シャンダラ副部長は、これらのシンプルな規則を守れば、チェルノブイリ原発ツアー時の被ばく量は、長時間の飛行機移動で得る量を超えることはないという。
チェルノブイリ原発の新たな命
アメリカHBOテレビの連続ドラマ「チェルノブイリ」は、同局史上最高の人気番組となっただけでなく、多くの外国人旅行者に、立入禁止区域への観光を促すこととなった。
立入禁止区域の人気が高まったことから、7月10日、ウクライナのウラジーミル・ゼレンスキー大統領は観光客用プリピャチ「グリーンコリドー(緑の回廊)」設置に関する大統領令に署名した。同じ日に、倒壊した第4号炉を覆う新安全閉じ込め構造物の稼働が開始した。
それに先立ち、4月にベラルーシが同国立入禁止区域の一般公開ツアーを始めている。
それでも、チェルノブイリ原発事故作業員は、立入禁止区域を訪れる観光客の増加を否定的に捉えている。とはいえ、エクストリーム(過激)ファンの動きを止めることはできない。