日露首脳会談を観察するにつけ、疑問がわいてくる。ロシアとロシアのリーダーは、どの程度本気で、領土問題に向き合っているのか、1956年の共同宣言を受けて、そこに書いてある条件を満たし、日本に島を引き渡す原則的な準備ができているのか?
見通しを概観してみると、この2つの要求を満たすことは不可能なように思われる。ロシアも、日本も、双方ともそのことをよくわかっている。
しかし安倍首相は自分の行動ラインを貫いている。そしてまた同様の疑問がわいてくる。安倍首相の、ロシアに対する政策は、どの程度真剣なものなのか?
もちろん、安倍首相および、ロシアに対する日本の対外政策の一貫性と、目的達成を目指した行動は正当に評価されるべきだ。安倍首相は、今月ウラジオストク行なわれた東方経済フォーラムの全体会合のスピーチの中で、日本は、信じるに値するパートナーであると述べた。
しかし、こうして安倍首相が日本の信頼性を請け合うよりも前に、プーチン大統領は昨年のトランプ米大統領との会談後に、「誰も信じてはいけない。あなたはいったい何を根拠に、トランプ氏が私を信頼し、私が完全にトランプ氏を信じていると?彼は米国の利益を守るし、私はロシアの利益を守る」と述べていた。
この日本は、米国の近しい同盟国である日本にもあてはめることができる。
雑誌「グローバル政治の中のロシア」に寄稿した自身の記事「岐路に経つ世界と未来の国際関係システム」の中でロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は、「米国は、かたくなに、すべての自国の外交パートナーを、ロシアと中国を押さえつけるように動員しようと躍起になっている。それでいて、ロシアと中国に仲違いしてほしいという願望を隠していない」と書いている。
それも仕方ないだろう。他国の同盟を揺るがし、自国の同盟を強化する、それは、外交のイロハなのだから。